ハナイロ物語<BROTHERS CONFLICT>

□愛を知るまで 1
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「…」




目を開けると真っ暗だった。




「…」




むくりと起き上がり、静かに携帯で時間を確認する。

AM3:56

今日はいつもより4分早く起きた。

音を立てないようにこっそり部屋の引き戸を開ける。

まだ誰も起きていないのを確認して台所に向かう。




「なー」




その道すがら、2つの光が近づいてきた。




「…おはよう。」




猫。

真っ黒な猫で、この家で飼っている。

…いや、正確には『隠れて』飼っている。

ばれたら、倉に閉じ込められる。




「おいで。静かにしてないと、また怒られるよ。」




言葉がわかるのか、猫は私の伸ばした腕の中に収まり、おとなしく声をひとつもあげなかった。

私は猫を抱き締めたまま、台所に急いだ。




台所に着き、冷蔵庫を開けようとして手を止めた。

きっと勝手に開けたのがばれたら怒られるだろう。

代わりに水道の蛇口をひねり水道水をだした。

直接を口をつけて少し飲む。

水を止めると机の上に置いてあるものに目をとめる。

100円

そのそばの紙には『食事代』とだけ書かれてある。

これが私の1日の食事代。

お金だけ取ると私は玄関へ向かった。




玄関には空っぽのスクールカバンとぐしゃぐしゃの制服が転がっていた。

制服に着替えてパジャマを洗濯かごに突っ込む。

とは言っても、週一しか洗濯してくれないので意味はないけれど。

カバンを掴むと、靴を履いて、家の裏口の鍵を持つ。




「さ、行くよ。」

「なぁ」




猫は小さくひとつ鳴いた。

私はそれを聞いて少し安心するとそのまま家を出た。
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