ハナイロ物語<BROTHERS CONFLICT>

□愛を知るまで 4
1ページ/5ページ

それからのことはあまり覚えてないけれど…

周りの患者さんたちが浮き足立つ中、叔母は私の手を引き、車の中に押し込んだ。

叔母の怒りがひしひしと伝わる。

家に着くなり、私を車から引きずり出した。

そしてその後は、本当になんにも覚えていない。

目を覚ますと、真っ暗だった。

身に覚えがある匂いと狭さ。

あぁ、ここは倉か…。

私が何か悪いことをしたとき、必ず入れられる場所。

傷つけられ、迫害される場所。

…私は…何をしているんだろう。

起き上がろうとするが身体が軋むように痛い。

頭がくらくらする。

頭を押さえると、手にぬめりとした生暖かい感触がする。




叔母「真奈美。」

「…はい。」




起き上がる。

この声に逆らうこと、この声に反応しないことは許されない。

例え私がどんな状況にあろうと。




叔母「なんであの場所にいたんだい?」

「学校で、倒れました。救急車で運ばれて、気付いたらあの病院にいました。」

叔母「あそこで何してたんだい?」

「…」

?「答えろ!!!」


がんっ!!!!!


叔母「あんた、やめな。」




叔母が制止する。

叔母が『あんた』と呼んだのは、叔母の旦那さん…私の叔父。

暴力的で残虐的で…人を苦しめるのを好む人。

私はいつも、あの人に殴られる。

叔父は倉の扉を思いっきり叩いたようで、音がエコーのように倉の中に響き渡る。




叔母「…で…どうなんだい?」

「…」




言えない。

雅臣さんに被害がいくと思うと…




叔母「はぁ…あんたはもっと痛めつけられないとわからないみたいだね。あんた…」

叔父「へへっ。」

「!!医者の先生と、お話してました!」




恐怖という痛みを植え付けられた私には、暴力が一番手っ取り早い。

それがわかっているこの二人は…怖い……

だけど、とっさにしゃべったとは言え、雅臣さんの名前を出さずに済んだ。

ホッとしていると、叔父は悔しそうに舌打ちした。

一方叔母は、怒りが隠しきれず、さっきよりも一段と低い声を出した。




叔母「…あんた、自分の立場をわかってるかい?」

「え?」




叔母の言葉は、声は、私にある感情を思い出させた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ