ハナイロ物語<BROTHERS CONFLICT>

□愛を知るまで 5
1ページ/4ページ

〜雅臣side〜



雅「お待たせ、自販機が混んでて…さ…」




僕がもう一度その場を訪れると、そこには誰もいなかった。

いったいどういうことなのか、と考えを巡らせていると、周りから気になる言葉が聞こえた。



『女の子』
『平手打ち』
『陽出高校の』
『朝日奈先生と一緒にいた』



僕はとっさに考えの結論を導き出した。



『彼女の身に何かあった』




雅「すみません。あの…何かあったんですか?」




答えが出ると、居ても立っても居られず、話をしている患者さんに話を聞きに行った。

その内容によると、母親らしき人物がベンチに座っていた少女ー真奈美ちゃんをひどくぶったらしい。

彼女は大人しく母親らしき人物に連れられて行ったらしいが…




雅「……」




どうも不安で仕方が無い。

彼女がご両親とあまりうまくいっていないだろうことはなんとなくわかっていた。

だが、暴力となるとこちらも医者である以上、黙って見過ごす訳にはいかない。

だからと言って、赤の他人で、つい先日知り合ったばかりの自分が口出ししてもよいものか…




看護師「朝日奈先生。どちらですか?」

雅「あ、はぁい。」




そういえば、この後に診察の予約が入っていたのを忘れていた。

僕としたことが…




雅「…今は、仕事に集中しよう。」




もしかしたら、もう少ししたら戻ってくるかもしれない。

でも、今日は日勤だから、夕方までに戻ってこなかったらどうしよう。

彼女の身に何かあったとしたら…




雅「!…はぁ…」




さっき、仕事に集中しようって思ったばかりじゃないか。

大丈夫、大丈夫、大丈夫…




雅「…大丈夫だよね、真奈美ちゃん…」




僕は、嫌な予感を胸に、ひとまず目先のことに目を向けた。



ーーーーーーーーーーーーー



雅「結局、戻ってこなかったなぁ…」




あの後、僕は仕事に集中した。

いつも通り、いつも通り…

子供達が怖がらないように、彼らが元気になるように。

僕はいつも通りに仕事をした。



『先生、大丈夫ですか?』



帰り際に言われた看護師の言葉は、僕を驚かせた。

どうしてか、と聞くと

顔色が悪い、と返された。

そんなつもりはなかったのだが…

もしかしたら、無自覚のうちに彼女の事ばかりを考えていたのかもしれない。

彼女の最悪な事態ばかりを…




雅「…はぁ。」




今日一日で、いったい何回ため息をついただろう。

僕は家の鍵を開けた。




雅「ただいまぁ。」

右「おかえりなさい、雅臣兄さん。」

要「おかえり、雅兄。」




家に入ると、右京と要がいた。

二人とも僕の大事な弟だ。




雅「ただいま、右京。要。他のみんなは?」




周りを見渡すと、いつもいる弥や侑介のすがたが見当たらない。

むしろ、この二人だけがここにいる方が珍しい。




右「弥と侑介は、昴と一緒に公園に行きましたよ。」

雅「そうなんだ。」

要「あれ?雅兄なんかあった?顔色悪くない??」




驚いた。

そんなにわかりやすいのだろうか…




雅「うん…ちょっとね…」

右「どうしたんですか?私で良ければ相談にのりますよ?」

要「ちょっとちょっと、京兄。俺もいるんですけどぉ。」

右「要は居るだけで何もしないじゃないですか。」

要「俺は、やるときはヤル男だよ?」

右「変換がいやらしいので信用できません。」

要「ひどっ!!」




あぁ、今思えば、二人もこんなに大きくなったのか。

…頼れるくらいに、大きくなったのか…




雅「ありがとう。…ちょっと、聞いてくれるかな?」




僕は簡潔に事情を話した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ