黒子のバスケBL

□summer tears
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思わず口許が緩んでしまったのを、青峰は慌てて手で覆い隠した。



「あ、あのスミマセン。あ、青峰さん。…いかがでしょうか?」



あぁ…何故、彼女はこんなにも可愛くなってしまうのだろう。






桐皇学園では、地域との交流を深めるために、夏祭りが毎年行われる。一般の露店の他に、生徒達が出す露店も入り混じって、賑わいを見せる夏祭りだ。
この中で、青峰と桜井は、自分達のクラスの露店の店番を、最初の方に任された。(桜井と当番だった男子を脅したのは内緒だ)なので、その桜井を青峰は迎えに行っていた。
原則的に生徒は制服か、この日限り着用を許される浴衣を着てくることになっている。そういうことに無頓着な青峰は制服を、桜井は浴衣を着てきた。

白地に涼やかな青や水色の花を散りばめて、それに合わせて、優しい青色の帯を身に着けている桜井。いつもとは違い、髪をまとめ上げているところが、また目を惹き付ける。

こういうことかと、青峰はポケットの中のかんざしを掴んだ。これは今朝、幼なじみの桃井 さつきが自分に押し付けてきた物だ。「お代は今度でいいから!」と、かんざしの挿し方だけ説明して帰って行った桃井だったが、今回ばかりは感謝せざるをえない。



「良。ちょっとこっちこい」



青峰の返答に、首を傾げながらも寄ってきた桜井の髪に触れ、甘い香りを楽しみながら、藍色の飾りが付いたかんざしを挿してやる。それに手で触れて、桜井はパッと青峰を見上げる。



「これ、かんざし…?」

「オウ。最強に可愛かったのが、最高に可愛くなったな」



その言葉に桜井はブワッと目元を赤くして、はにかんでうつむいてしまう。そんな彼女を今すぐにでも連れて帰りたい、と青峰は思ったが、桜井は青峰の手を遠慮がちに握った。



「…あ、の…そろそろ、行きましょう?み、店番が終わったら、自由…ですから」

「…わぁーってるよ。その代わり、終わった後のお前の時間は、俺の貸し切りな」

「は、はい…スミマセン……」



小さく頷いたのを見て、今度は隠さずに笑ってから、青峰は一回りも二回りも小さく白い桜井の手を、指を絡めるように握り直して、引っ張っていった。







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