リクエストlog

□ボールが繋ぐ愛
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桐皇学園高校に入学して、八ヶ月ほど。



桐皇の男子バスケ部に入部して、八ヶ月ほど。



…焦がれてやまなかった彼と再会して、八ヶ月ほど、時間が過ぎた。
桜井良は今、黒いジャージに身を包んで、WC一回戦…誠凛との再戦に臨もうとしていた。






未だに鮮明に思い出される、中一の初夏の日。桜井はひとりぼっちで、穴場のストリートバスケに通いつめていた。



シュッ!!ガシュッ!



「っ、もっとだ。もっと、正確に、狙わなきゃ…」



リングに当たって入ったボールに眉根を寄せて、桜井は拾っては打ち、拾っては打ちを繰り返す。自分に出来る最速の3Pを目指して。



彼は、ここから少し離れたところにある中学で、バスケ部に所属している。一年生ながら、ユニフォームも貰っているし、スタメンとして起用されることもある、一見有望な選手だ。
だが、桜井は現状に全くと言っていいほど、満足していなかった。……同地区に帝光がいる。その事実だけで、挑戦もしないまま諦めている部員。勝つための練習がない部活。そんな部で、時々しかスタメンになれない自分。生来、負けず嫌いの気質を持つ桜井には、とても酷な環境だった。
しかし、桜井は一人で努力を続けた。周りに合わせて諦めたフリが出来るほど、器用でもなかったからだ。そんな彼に、周りは冷たかった。



「桜井のやつ、またやってるぜ」

「お前入ったって何も変わんねーよ!」

「だから、無駄な努力なんかやめろよ!!」



桜井の努力は、周りの部員達の目には、諦めてしまった自分達への責め句として写っていたようだ。後ろ指を差すだけだったのが、暴言を吐くようになって、次第に暴力に訴えるようになって…

それでもやはり、桜井は不器用だった。諦めて逃げ出すなんて思い付くこともなく、無言の抵抗のように努力を続けながら、“すいません”という、一般的には謝罪と見なされる言葉を口癖にして、のらりくらりと周囲の圧力をかわしてきた。
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