その他

□守ってやらなきゃ
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俺はある営業先の楽屋で髪をセットしていた。

すると楽屋のドアが開き、相方が入ってきた。俺は短く「おはよう」とだけ言い、顔は鏡に向けていた。

しかし、相方は何も言わずにドアの近くにあった椅子に腰かけ、荷物も置かずにテーブルに伏せてしまった。
いつもと様子が違ってたので「どうしたん」と聞いてみたがまったく反応がなかった。

こうなると本当に心配になってきてしまい鏡から目を外し、相方の座った椅子の目の前の椅子に座った。



「おい石田、どうしたん」

「おお井上…別にどうもせぇへんよ」



いやいや、どうもせぇへんことないやろ。
よう見たら顔色悪いし汗も尋常じゃない。



「具合悪いんか」

「え、あー…うんまあ、そんな感じや」

「なんやそれ。何かあったなら話せぇや」



そう言うと石田はその“何か”が言いにくいことなのか黙ってしまった。

なんやねん!ほんまに!!

するとしばらくして石田はしぶしぶその口を開いた。



「あの、なあ…その…また、あってん」

「…?何にやねん。はっきり言えや…」

「…はあ、もう分かれやー。だからモテへんねんアホ」



誰がモテへんねん。モテモテや。モテモテすぎて外歩くのこわなったわ。
そう言おうとしたら、石田が「痴漢や痴漢ー…またあってん…」と言い出したので言えなかった。



「痴漢て、おまっ、まだ…!?」

「うっさいのう!最近まったく無かったから警戒心ちょっとゆるんどったんじゃ。そしたらこれや、この有り様や」



ほんとメンズ大好きメンズにモテるなお前、と少し茶化そうと思ったが、意外と今回は結構キテるみたいでガチで落ち込んでるのでやめておいた。



「そんな酷かったんか、今回は」

「ま、まあな…」

「ふーん…」

「ふーんてお前…。ま、ええか。ちょっと俺疲れたぁ…少し寝るわ…」



おう、と返事すると目の前でテーブルに伏せて寝始めた。

いや、もうちっと寝方あるやん。







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