紳士の秘密ページ

□見せられぬノート
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授業が終わり、私は黒板に書いてある文字をノートに写していました。


「逃げないで、亜澄」

「逃げるわよ。なんで私がアンタの作ってきた紫の煙が出る物体Xを食べなきゃなんないのよ!」

「美味しいと思うから。命の保証はないけど」

「ますます食えるかぁっ!」


またも幸村君と亜澄さんの追いかけっこが繰り広げられているようです。

しかし、今回は廊下からではなく、窓の外から聞こえているため屋外で走りまわっているのでしょう。


(2人とも、元気ですね)


ですが、私としては亜澄さんが幸村君と仲がよさそうなので少々嫉妬してしまいそうです。

黒板の文字をノートに書き終えましたが、一度亜澄さんのことを思うと、なかなか彼女が頭から離れてくれません。

だからでしょうか。とうとう私は無意識に、


“亜澄”


と、現国ノートに書いてしまいました。

私は一体何をしているのでしょう。それも、ボールペンで書いてしまったので、消すに消せない。

まぁ、このノートは提出する機会がないからいいでしょう。しかし、ここまで彼女のことを思うなんて……。

だからでしょうか。しばらく、ノートに書いてしまった彼女の名前を見ていたため、


“柳生 亜澄”


先ほど書いた彼女の名前に私の名字を無意識に足してしまいました。なんだか、とても微笑ましく思ってしまいます。が、このノートは他の方に絶対に見せられませんね。


「おーい、柳生」


私の名前を呼んでいるのはA組にやってきたのはB組の丸井君。
廊下から呼んでいらっしゃるようなので、私はそちらに赴きました。
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