紳士の秘密ページ
□見せられぬノート
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「丸井君、何のご用でしょうか?」
「悪いんだけど、現国のノート貸してくんね?昨日、休んでたから授業の内容がイマイチわかんねぇんだよ。しかも、次の授業が現国だから同じクラスの奴に頼むこともできねぇしよ」
「いいですよ。今、持ってくるので少々お待ち下さい」
「恩にきるぜ」
私は一度自分の席に戻ってから、先ほどまで書いていたノートを手に持ち、再び丸井君の元へと行きました。
「私は先ほど現国の授業を終えましたので、今日の部活の時間に返して頂ければ結構ですよ」
「おう。悪いな」
私の現国のノートを手にした丸井君は、B組へと戻っていきます。
そういえば、私は何か忘れている気が……丸井君の手には現国のノート。
「待てー」
「来るなぁ!」
外には幸村君から追いかけられている亜澄さん。
そんな彼女を思いながら先ほど現国のノートに書いた彼女の名前。さらには自分の名字も書き足しました。
そして丸井君に呼ばれ、現国のノートを貸しました。
(………!!)
気づけば、私は丸井君の元へダッシュしていました。あれを見られては、私の秘めたる亜澄さんへの思いが知られてしまいます。
「丸井君!」
「うぉっ!きゅ、急にどうしたんだよぃ、柳生」
いきなり大きな声を出して、窓際の席に座る丸井君を驚かせてしまいました。ちょうどノートを開く寸前です。
「先ほど思い出したのですが、実はノートに1か所だけ間違いがあるんです。ですから、直してから貸しましょう」
半ば強引に丸井君が手にしているノートを取ろうとしましたが、丸井君の掴む力はとても強くなかなか手を放してはくれません。
「別に1か所くらい気にしねぇよ。後で柳とかのノートと見比べればいいし」
「いえ、やはり間違っているところをお教えすることになりますし」
「だから、別にいいって」
私としてはこのノートを見られたくありません。そのためか互いにノートの引っ張り合いみたいになってしまいました。