紳士の秘密ページ
□追いかけられる理由
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「それより、どうして幸村は亜澄をいつも追っかけとるんじゃ?」
悩んでいる私をよそに、仁王君は話題を変えました。
「そのことについては2つのパターンがある?」
「パターン、ですか?」
「1つは亜澄が何か失敗をして幸村に被害が及び、キレた幸村が亜澄を追いかけるときだ。亜澄が謝りながら逃げているときは100%この状態だ」
「んで、もう1つは?」
「幸村の亜澄を使った暇つぶしという名の嫌がらせ、亜澄を使ったストレス解消目的の嫌がらせ、または八つ当たりなどから亜澄が逃げるときだ」
亜澄さんがものすごく不憫に思えてきました。
これからはいつも以上に彼女に対して親切になろうと思います。
「気になるのう、その嫌がらせ。面白そうじゃ」
「仁王君、そのようなこと思うのはやめたまえ。亜澄さんにとっては理不尽なことなのですから。ねぇ、柳君?」
「いや、俺も興味はある。追いかけよう、あの2人を」
「柳君まで!?」
「柳生も来んしゃい。本当は気になっとるんじゃろ。亜澄と幸村の仲を」
確かに私は幸村君と亜澄さんの仲が良い(?)ことに少しジェラシーを感じてはいます。
しかし、誰にも話していないのに仁王君は私の秘めたる思いを見抜くとは……。
「そろそろ戻ってくるころだが……」
柳君がそう言うとどこか遠くから足音が聞こえてきました。
ドドドドド……
「来るなー!」
「待てー!」
「待たんか、お前らぁ!!」
先頭を亜澄さん、それを追いかける幸村君、さらになぜか2人を追いかけている真田君が校舎の方から戻ってまいりました。
「亜澄さんと幸村君の追いかけっこはわかるのですが、なぜ真田君まで?」
「おそらく、亜澄と幸村が廊下を走ったことにより、注意するべく追いかけている確率100%だ」
「そんなことより、早く俺らも行くぜよ。あいつらの足が速すぎる」
というわけで、私たちも事の顛末を見るために彼らの後を追っていくことにしました。
「すごい速さじゃな。全力でやっと追いつける」
「仁王君もですか。私もです」
そう、とにかく速いんです。柳君が手に持っているノートにデータを書き込めないほど。
「……これは、いいトレーニングになるかもな」
「柳君、毎回何もしていない亜澄さんが幸村君に追いかけられなければならないトレーニングはやめた方がいいでしょう」
しばらく走っていると、全速力で丸井君、ジャッカル君、赤也君がやってきました。
「お前ら、全速力で何やってんだ?」
そう丸井君が聞いてきたので、今の状況をわかりやすく教えてさしあげました。
「おもしろそうだな。よし、早くあの2人に追いつくぜ!ジャッカルが」
「俺かよ」
「俺も気になってたんスよね!がんばってください、ジャッカル先輩!」
「いや、無理だろ。あいつら速すぎる」
この頃、亜澄さんはと言うと……
「ったく、まだ追いかけてくんの、幸村め」
と言い、後ろを振り返ったら
「ギャーッ!?なんでみんなして追いかけてくるのさ!?」
この大がかりな追いかけっこは幸村君が飽きるまで続けられたという。