紳士の秘密ページ
□隣を夢見るまで
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「学校周辺で最近、不審者が出ることは担任から聞いているよね」
午後の部活が終了し部員が集合した中、部長の幸村君が言いました。
それは今朝、各クラスの担任の先生が言っていたことで。なんでもその不審者は女性を狙うそうで、相手の手をつかみ離さないそうです。
「帰宅するときはなるべく複数で帰るように。それから亜澄」
「なに?」
幸村君はマネージャーの亜澄さんを名指しし言いました。
「君は女子なのに色気がまったくない」
「悪かったわね」
「でも、仮に不審者が女なら誰でも狙うような輩だったら、女子の制服を着てなんとか女子であることを主張している君も危険だ」
「喧嘩売ってんの?」
「そこでだ」
幸村君は穴が開いた箱どこからか取り出しました。
「これから毎日、俺の作ったこのくじをレギュラー全員に引いてもらって、送り役と書かれたくじを引いた人がその日の亜澄を家まで送る役にしたから。みんな、いいよね?」
彼の言ったことに皆が賛成しました。確かに不審者が出るかもしれないときに女性が一人で歩いているのは、狙ってくださいと言っているようなものです。
というわけで、一人ずつくじを引いていきます。
「ジャッカルが最初の送り役になる確率、84%」
「あ、俺だ」
柳君の言った通り、最初の送り役はジャッカル君になりました。
「行こ、ジャッカル。帰りにアイス奢ってよね」
「俺は財布か。みんな、お疲れ」
「バイバーイ」
亜澄さんはジャッカル君の腕を抱きながら彼と帰っていきました。
なんて羨ましいのでしょう。私も亜澄さんに抱きつかれ腕に当たる胸の感触を楽しみ……ではなく、楽しく談笑しながら一緒に帰りたいものです。
「亜澄先輩ってジャッカル先輩と仲良いっスよねー」
「そうだな」
私は赤也君と丸井君の話に耳を傾けました。
「この前、みんなでカラオケ行った時も2人でデュエットしてたし。あと2人で買い物に行ったてきいたっスよ」
「もしかしたら今日一緒に帰ったことがきっかけで、明日から付き合ってるかもな」
な、なんですと……!?
『私、ジャッカルと付き合うことになったの!』
も、もし、そんなこと言われたら……私の、将来の恋人が……!
「なんか柳生先輩、放心してません?」
「そうか?」
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