虹の検事局・後編

□第24話(6P)
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■12月24日 地方検事局 12階 上級検事執務室■

 翌日の夕刻、御剣の執務机の電話が鳴る。内線で亜内検事からだった。
「あ、御剣検事、あなたに聞いていいものか迷ったんですが‥‥」
「なんでしょうか」御剣は、亜内のひどく当惑した声に、いやな予感がする。
「夜芽君が公判に現れなくて‥‥。午後に一人で捜査現場を出たあと、連絡が取れないのです」
 御剣は、準備していたことが間に合わなかったと直感した。
「事件がらみかもしれません。私のほうでも調べてみましょう」そう言って電話を切った。

 彼はまず、一番頼りになる捜査の相棒に電話する。しかしいつもの元気な声が、なかなか出てくれない。仕方なく糸鋸に連絡した。
「ミクモちゃんッスか? そういえばクリスマスイブからリゾートアイランドに行くと言ってたッスよ」
「‥‥‥‥」この緊張感と場違いな単語の羅列に、御剣はしばし絶句する。‥‥高校生は冬休みか。

「羨ましいッス。自分も連れてって欲しかったッスぅ」
「連絡先は?」
「聞いてないッス」
「まったく役に立たない男だな。来月の給与査定は‥‥」
 と言いかけたとき、胸ポケットの携帯電話が震えた。見てみると仁菜の番号からだった。御剣は、何やら言っている糸鋸の声を無視して受話器を起き、携帯の受話ボタンを押す。

「ミツルギ検事ですか?」
 聞こえてきたのは、思った通り、仁菜の声ではなかった。
「亀代だな」
「さすが、天才検事。話が早くて助かるな」
「何が目当てだ」
「ミツルギさん」
「なんだと?」
「彼女を守りたかったら、来てね。もちろん一人で」

 亀代は倉庫街の一角にある空ビルの一室を指定した。
「わかってると思うけど、警察に言ったら彼女はオシマイだよ。その証拠をあとでメールするからね」



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