SIDE STORIES

□BEDROOM(5P)
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 御剣は、手を伸ばして、ベッドサイドのランプをつけた。ガラスシェードを通して、オレンジのやわらかい光が2人を照らす。御剣の目は、思ったより真剣だった。
「つまりだな、キミのご両親に挨拶をして、ちゃんとしてから」
「ええっ? ちゃんとって?」
「ご両親に、私たちの交際を認めてもらって‥‥」

「御剣検事って、古風なんですね‥‥‥。今までのお付き合いでも、そうだったんですか?」
「ム‥‥‥キ、キミはどうだったのだ」
「私は‥‥‥今まで、勉強ばかりだったから‥‥付き合いとかは‥‥‥あのその‥‥‥」彼女は恥ずかしそうに目を伏せる。
「うム‥‥‥」彼も一緒に恥ずかしそうな顔になる。

 御剣のベッドで、シーツを首までかけている仁菜と、ピンクのパジャマでその脇に座り、寝癖も一つじゃなく二つも三つも付いている御剣が、それぞれの思いで、しばし沈黙する。

「み、御剣検事に聞いたんですよ。御剣検事はどうだったんですか?」
「私は、海外に長く居て、その‥‥海外にいたときは‥‥若かったし‥‥」歯切れが悪い。「しかし、今はもうあの時ほど若くもなく、社会的責任もある立場だからな。いい加減なことはできない」

「したくないってことですか?」
「!!!!!!! 女性がしたいとかしたくないとか、そんな言葉を使うものではない!」
「すみません‥‥‥でもどうなんですか?」
「むむむむむむ‥‥‥私は責任の話をしているというのに」
 そして、ふう、とため息をついて、「まったく私がどれだけ我慢していると思っているのだ」と、ぶつぶつと独り言のように言った。

「我慢してるんだ?」仁菜はちょっと嬉しそうに言う。
「当たり前だ。男だからな」そう言って、御剣は、彼女の頬に手を伸ばして撫でた。
「我慢しなくていいです」
「だから、そういうわけにはいかないと言っているだろう。‥‥‥堂々巡りだな」
 彼は思わず苦笑を漏らす。

「結局、責任を取れないから、したくない‥‥‥と‥‥」
「誰も取れないとは言っていない。責任を取るにも順番があると言っているのだ」
「もう責任なんてどうでもいいです!!」
 仁菜は御剣の二の腕を、シーツから伸ばした両手でぐいと引っ張った。
「こ、こらッ!!!」


(おわり)


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