虹の検事局・後編

□第20話(5P)
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「私も大丈夫です」
 木之路は、またていねいにお辞儀をして去って行った。

「御剣検事、ああいうタイプの女性が好みなんじゃないですか?」
 仁菜は、まだ何か言わずにはいられない。
「む」御剣の眉間のシワが深くなる。
「美人だし、楚々としてて、スタイルも良くて」
「‥‥‥」
「しっかりしてて、気が利いていて、髪もメイクもカンペキだし」
「‥‥‥‥」
「ああいう女性と、お似合いな感じがします」

 御剣はため息をついた。
「その話題はいつまで続くのだろうか?」
「え‥‥‥」
「その話題がまだ続くのなら、私もアイマスクをして寝るとしよう」
 意地悪で言うというより、本気でそう思っているような口調だった。アイマスクを探して、シートポケットを開こうとしている。

「あっ。だっ、だめですよ。こんな早くから寝たら、困ったことになりますよ!」
 仁菜が必死になって言うのを、御剣は可笑しそうな顔で眺める。
「困ったこと?」
「そ、そうですよ」
「なんだろうか、それは」

「えっと、それはですね‥‥‥。それは‥‥‥」
 赤くなって口ごもる仁菜を見て、御剣は目を細める。「本当にキミは、‥‥アレだな」
「え?‥‥‥」アレというのが、いい意味とはとても思えないが、御剣の目が少し笑っているので、仁菜はどういう顔をしていいかわからない。
「あ、はい‥‥」彼女は、とりあえず頷いておいた。

 * * * *

 上空1万メートルに達してだいぶ時間が経った頃、静かだった機体が少し揺れはじめた。ポーンという警告音の後、機内放送が流れる。
『気流の悪いところを通過しております。シートベルトをお締め下さい』



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