虹の検事局・後編

□第21話(5P)
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 司会者が、ひときわ大きな声で言う。「御剣検事、2回目の受賞です! おめでとうございます。授与するのはもちろん検事局長です! お願いします!」

 検事局長からトロフィーを受け取ったあと、御剣が受賞の挨拶をする。
「うム。予想外だったので、‥‥‥少し、驚いている」軽く咳払いをする。

(ほんとうに戸惑ってるんだ)仁菜は意外に思う。

「今年受賞できるとは、思っていなかった。検事局のみなさんに感謝します」
 大な拍手が起こり、「おめでとう!」の声や、口笛が会場のあちこちから聞こえる。仁菜も力いっぱい拍手した。

「ずいぶん謙虚じゃないか? 前に受賞したときと、えらく違うな」
 仁菜のすぐ後ろにいる男性たちの会話が聞こえる。
「あの時は、貰って当然、別に欲しくもないし、って顔してたからな」
「しかし、すごいね、あの年でもう2回目だなんて」
「今年は確かに、大事件を次々と解決してたからねえ」

(そんな中で、私たちにきっちり指導もしてくれたんだよな‥‥‥やっぱりスゴイ人だ)

「それにしても、御剣検事も変わったもんだ」
「ほんとだね。あんな噂があった人物とは思えないねえ」
 男たちは話し続ける。御剣は、検事局長と握手して、ステージの袖に消えた。

 彼は変わったといろんな人が言う。仁菜が、司法試験のために必死に学んだ有名な判例のいくつかに、御剣が関係していると知ったのは、検事になってからだ。昔の新聞や雑誌の記事が本当ならば、確かに彼は変わったのだろうと彼女も思う。

「過去のことなんて、本人は気にしてなさそうだ」男の声は続き、グラスの中で氷が動く音がする。
「気にしてないどころか、すっかり忘れてそうだね」
「デキる男は過去を振り返らないんだよ。君も見習わないと、一生かかっても検事・オブ・ザ・イヤーなんて貰えないよ」
「言ってくれるね。アハハハハハ」男達は笑った。

(忘れてる? そうだろうか‥‥)

 仁菜は、その場を離れながら思う。そんな話はしたことがないけれど。
 彼女は人々をすり抜けながら、広間の後ろのほうに戻った。隅の窓際に立って、灯りのともされた庭園を見つめる。皆いろいろ言うけれど、今の御剣しか知らない仁菜には、過去の彼の姿が想像できない。証拠捏造とか偽証取引とか‥‥‥‥?



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