虹の検事局・後編

□第23話(6P)
3ページ/6ページ


 御剣は午前中、そのペットショップの登録データに当たっていた。ある種の輸入ペットは、所定機関への申請が必要だ。確かに10年前、シロリクガメを納入した記録はあったが、その後のデータはない。ペットショップは3年前に廃業しているが、その際の処分リストにも上がっていなかった。なんらかの理由でデータが抜け落ちた可能性もあるが、もう1つ、別の可能性もある。

 現在その住所には、元経営者の息子が1人で住んでいた。しかも、その男には、微罪だが前科があった。その際、ナイフを所持していたと記録にある。全体として、あまりいい話ではないと、御剣の勘は告げていた。
 この件は、仁菜に局内のメールで送ってはあるが、朝から現場だとしたら、読んでいないのだろう。

 * * * *

 仁菜は、同級生、亀代の家のリビングに座っていた。顔見知りだった両親と同居しているものと、勧められるまま家の中に入ったのだが、彼が一人暮らしと聞いて、若干の居心地の悪さを感じていた。彼は、両親については言葉を濁して語ろうとしなかった。
 こじんまりとした洋館の家は、以前に比べてどことなく荒れた雰囲気が漂っている。隣接するかめしろペットショップはシャッターが下りていた。

 それでも亀代は、爽やかな笑顔だった。
「ひさしぶりだよね」
「ほんと」仁菜の実家は事件後に越しているので、このあたりは懐かしい風景だった。
 小学から中学まで何回か同じクラスだった2人は、しばらく、昔話で盛り上がった。

「ところで、知りたいことって?」亀代が尋ねる。
「仕事で調べてることがあって‥‥‥昔ここにいたカメがどこに売れたか知りたいんだよね。10年ぐらい前の話なんだけど」
「10年前? 店の伝票はもう捨ててしまってるし、わからないなあ」
「珍しい種類だから、記憶にないかな? シロリクガメ、なんだけど」

「ああ!」亀代は、頷く。
「覚えてる?」
「覚えてるけど‥‥‥どこに売れたかは教えられないな。プライバシーだしね。でも、なぜそんなことが知りたいの?」
「それは、まだちょっと言えない‥‥かな」

 これ以上、説明していいのか、仁菜には判断がつかなかった。でも、亀代君が知っているとわかっただけで十分だ、さらに真実に一歩近づけそうだ、と彼女は思う。これからのことは、御剣検事に相談してみよう‥‥‥。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ