虹の検事局・後編

□第29話(6P)
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 美雲は、小さい木彫りの人形を3つ、執務机の上に並べた。それぞれに服の色が違う。
「これ、願いが叶うお人形なんですよ。みんなお揃いですよ〜」
「おー、かわいいッス!」糸鋸はニコニコする。

「ものすごく効果あるって噂なんですよ!!」
 人差し指で鼻の下をこすりながら、美雲は自慢げに言う。「黄色いのは金運で、青いのは仕事運、赤いのは恋愛運です!」
 美雲の言葉に、御剣の眉がぴくりと動いた。

「えーっとノコちゃんは、やっぱり、金運だよね!」
「その通りッス。給料日までたいぶ日があるから、ありがたいッスよォ」
 さっそく涙目になっている。
「そしてミツルギさんは、この青い仕事運の‥‥‥と」

「ッ‥‥‥」御剣は奥歯を噛みしめた。そして次の瞬間、

「待った!!!!!」

 御剣の声に、残る2人が目をぱちくりさせて顔を上げる。

「わわ、私は、赤いのが‥‥‥」

「えっ??? これ恋愛運のお守りですよ?」美雲がきょとんとする。糸鋸も目を丸くしていた。
「いや、その。ほら、色が‥‥‥な。色だ色。色以外に何があるというのだね」
 御剣はいつになく早口になる。

「あー、そっか。赤がミツルギさんのマイカラーですもんね!!!」
「そうッス。青は御剣検事のライバルカラーッス!」

(なんだマイカラーとかライバルカラーとか)と思いつつ、あさっての方向を見ながら、うなずく御剣。
「じゃあどうぞ。わたしは青でいいですよ。大ドロボウの仕事で、お宝盗みまくっちゃいますから!」
 御剣は、本来なら心の中でツッコミを入れるその言葉を聞き流して、美雲から赤い人形を受け取り、嬉しげに礼を言った。


■同日 地方検事局 8階 新任検事執務室■

 その日の午後7時、仁菜は、自分の執務机に座って、そわそわしていた。迎えに行くと言われたけど、どういうことだろう。どこで待っていればいいんだろう‥‥‥。メールしてみようか。

 あれこれ考えていると、室内がざわつく気配がする。顔を上げると、御剣が入口あたりに立って、室内を見渡しているところだった。顔を上げた彼女と目が合う。新任たちが、いろんな表情で御剣を見つめるが、彼は気にかける様子もなく、片手にコートを持ち、片手をズボンのポケットに入れて、奥の方にある仁菜の席にまっすぐ歩いてきた。



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