SIDE STORIES

□JEALOUSY(2P)
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 ほめられた、だと? 指導担当でも上司でも何でもないあの男に、なぜ彼女がほめられなくてはならないのだ。しかもそれで頭を撫でるか?!
 思い出すだけでも、腹が立つ!

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 さっき官舎に帰ったら、御剣検事の車が玄関前の駐車スペースに止まっててちょっとびっくりした。今日は何の約束もしてなかったのに。

 運転席を覗き込むと、腕組みして指をトントンさせながら恐い顔で正面を睨んでいた。目の前に何かあるのか、思わず何度も見てしまったぐらい。
 この車は目立つから裏の駐車場に止めたほうが‥‥‥と言うと、いつもは「わかった」って動かしてくれるのに、さっきは玄関前から動かしてくれなかった。なんとなく機嫌が悪い感じで。

 今日、夕方近くに裁判所で会ったときも、そういえばいつもと様子が違ってた。呼ばれてロビーの端っこの方について行ったら、頭をこう両手で挟むようにして、きつい目で見られたと思ったら柱に押し付けられて突然キスされて、怖かった。柱の陰とはいえ、すぐ近くに人がいるところであんなことするからほんと焦った。

 牙琉検事に今夜のライブの割引券をもらった話をしたら、すごい嫌そうな顔するし。まあ、ガリューウエーブのライブにはあんまりいい思い出がないのはわかるけど‥‥‥。どっちにしろ仕事だから行けないって言ったら、「では事務職員にでもやろう」って券を取り上げられた! 私がもらったのに!

 そう、それで、さっき車から降りて、私の部屋に入ると御剣検事はいきなり「我々のことは、検事局ではもう隠さなくていいだろう」と言い出した。付き合い初めから、彼は一貫してこういう意見だけど、私はいやなので内緒にしてもらっていた。
 彼は、糸鋸刑事と狩魔検事には話していると言っていて、私は神乃‥‥ゴドー検事と天杉さんには一応話した。あ、あと矢張さんは知ってる。

 御剣検事は、今みたいにこそこそしないでもっと堂々としたいと言う。検事局公認、って言葉はとても魅力的だ。でも上手くいってる時はいいとして、別れたら?
 別れただけでなく、御剣検事に新しい彼女ができたら? そうなったら私の立場は結構哀れで惨めなものになると思うんだけど。それがいちばんの不安だ。

 そう言うと、「そんなに先のことは考えなくていい」って彼は言った。「キミに新しい相手ができるかもしれないではないか」とも。

 先のことって言われると、逆に、必ずくる未来って感じがしてくる。別れる日のことを想像してしまって、話しているうちに私はなんとなくもの悲しい気持ちになった。

 なのに彼はそんな私の気持ちなんか、まったく気づく様子もなくて、なぜ私がそんなに隠したがるのか納得できないようだった。「御剣怜侍のような男と付き合っていると知られたくないのか!?」なんて言うし。あり得ないっていうのに。

 結局最後に、このことは考えさせてください、って言ったら、彼はすごく不服そうな様子で、検事局に帰って行った。仕事の合間に来たらしい。
 あー困った。どうしたらいいんだろう。


(おわり)


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