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□Several Days Later
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「ああ。最初からそう言ってくれればいいのに」
「キミに指摘された通り、本来はもっと、その‥‥ロマンチックな趣向を凝らしてだな‥‥」
「大丈夫ですよ。法律の条文でプロポーズなんて、御剣検事らしかったし」
「ぐぅ‥‥‥」
 御剣はさらに赤くなって言葉に詰まる。

「趣向なんて別に必要ないですから」
「そ、そうなのか? しかし女性はだな、一生に一度の思い出として、相当な演出を期待しているのではないだろうか?」
「相当な演出? 何で調べたんですか。それ」
 奈理は思わず体を離して、彼と向き合う。

「バラの花束とか、船上でシャンパンとか‥‥違うかね?」
「船上ぉ?」
「うム。クルーザーであれば狩魔家のものを借りることができるが、あいにく船舶免許がない。操舵に誰かを雇うというのも‥‥その。これから私が取得することも考えたが、なにしろ今は忙しくて時間が取れん‥‥‥」

「だ、だからいいですって。こないだので!」
 腕組みをして本気で船舶免許取得を考えている様子の御剣に、奈理はあわてて言った。

「それより」彼女は少し暗い声になって言った。「気になってるのは、わたしがいろいろとアレ、ってほうです。おいおい直せばいいみたいなこと言ってましたよね。あの時」

「ム? そうだったろうか?」

「私の妻になるにはアレなところがあるって、結構上からな感じで言ってましたよ?」
 奈理はじっと彼の目を見た。実はずっと気になっていたのだった。

「あ、ああ。そう言えばそうだったな。すまなかった」
 御剣はまた彼女の頭に手を置く。

「なんですか? アレなところって」
「それはまあ、おいおい‥‥」
「気になりますよ! いろいろとアレって」
「う‥‥ム」
「なんなんですか? はっきり言ってください!」

「それは。その一つには‥‥‥」

 奈理は言いにくそうにする彼を息を詰めて見守る。ゆったりとナイトティーを味わうはずの時間が、それどころじゃない感じになってきた。が、これだけは早く聞いておきたい。

「アレだ。キミがよく聴く‥‥」
「え?」
「あの騒がしい‥‥」
「ガリューウエーブのことですか?」
「ご名答。その牙琉のウエイブをだな、まあできれば私が不在の時にしていただけないだろうかと」
「御剣検事がいる時には小さい音にしてたと思うんだけど‥‥、でも、はい。そうします」
 そんなことなら、と奈理はうなずいた。

「アレには頭痛がしてくるのでな」
「わかりました。でも、他にもまだありそうです、ね‥‥?」
「うム。もう一つ‥‥‥」
 御剣はさらに言いにくそうに口ごもり、深く溜め息をついた。

「なんですか? 料理? 部屋の片づけ?」

 奈理は心配のあまりドキドキしてきて必死に聞いた。今日もまたへたな手料理を作ってしまった。もう料理して待っててもいいって言われて、嬉しくて調子に乗っていた。

「そんなものは!」

 御剣は首を大きく振って否定するが、続きはなかなか言ってくれない。



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