text(平浦)
□だからってどうする?(そんな〜の続き)
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(あ、あかん…
なんやこの顔。俺いっつもこんなしまらん顔しとってん…?)
自室の鏡の前で平子はうなだれていた。
『喜助のこと好きやろ』
ひよ里の言葉が重くのし掛かる。
(俺が喜助を好き・・・)
喜助には礼もよく言えないほど世話になっている。
気も合うし、最近は古くからの友人のように親しくなったように思う。
嫌いなわけはない。
好きか嫌いかなら好きだと思う。
でも、ひよ里に問われている好きか嫌いかは、恋愛感情だ。
喜助に恋しているかということだ。
あの様子では仲間内に平子が喜助が好きというのは通説なのだろう…
(俺が気づいてへんてどないやねん!!)
さっき、リサに言われるまま手鏡で自分の顔をみて、喜助のことを思い出してみた。
自分でも吐きたいほどの甘い顔だった。
(俺はガキか)
情けないやら恥ずかしいやら、平子はこの日初めて恋心を自覚した。
喜助は背も高く、顔もいい。だらしない格好さえしていなければ、道行く人が振り返るだろう。
研究や、仕事で忙しいだろうに、尸魂界にいる時から現在にいたるまで、訪ねるといつも笑顔で迎えてくれた。
(今思えば、むこうにいる時からやられてたんかもしれん)
なんだかんだで、暇があくと足が喜助の方に向く。
ただくだらないことを喋り倒して帰ってくるだけだが、なぜか心は満たされていた。
「平子サン」と呼ぶ声が好きだと思う。
あの満面の笑みが可愛いと感じる。
いつも言わずに気遣ってくれる気持ちを嬉しいと思う。
冗談を言い合うあの時間も愛しいと思う。
顔も口も手も背中も喜助をつくる全てを、気がつけば苦しいほど想っていた。
(あかん、俺もう病気や、気づきとうなかった…どないしよ、もうどないな顔して喜助に会うねんな…会えん…死んでまう)
ガチャガチャ
『シンジィー!?入るよ〜?☆』
ノックもなしに白が入ってきた。
『なっ!白!!いきなり入ってくるなや!!』
平子はギョッっとする。ちょっと泣きそうな所だったので慌てて顔を洗う。
『ただいま♪お土産買ってきたからみんなで食べよーシンジィーの好きな寺谷のチーズケーキだよん』
平子の抗議はスルーした白が、誘う。
『あ、あとで食う…』
(さっきの今でどないせーっちゅうねん)
『えー一緒に食べよーよー!!『さっきのことなら気にすんなよ』ってケンセーがゆってたよ。』
『!!』
(これでいかんかったら、めっちゃ気にしとることになるやんけ…)
『わ、わかった直ぐいくし、先行ってや』
(腹くくれや俺!!どうせ前からばれとったことや…言って開き直ってまおう)
なんや酸っぱいのぅー。
俺は乙女か!!と自分でツッコミながら平子はリビングへ向かった。