text(平浦)

□月の綺麗な晩に(誤解〜の続き)
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空にはまんまるな月がのぼっていた。
浦原商店の中庭、テッサイはもう休んでしまったらしく、浦原は独りで縁側に腰かけていた。
『リサさん、遅いっスね〜』

ぼんやりと月を見上げていると見知った霊圧を微かに感じた。

(平子サン…)

目線を下げると平子がいた。

『あの夜みたいだ』

浦原がポツリと言った。


『なんや?』

平子は少しずつ浦原に近づく。

『なんか、もう平子サンに会えないんじゃないかと思ってたんス』

つーっと浦原の目から涙が流れた。
月の光にあたってキラキラ輝いて落ちていく。

(こないな自分より背も高い男を可愛いと思うてもうた。あかんな。完全恋の病や…)

『喜助』

『はい、なんスか?平子サン』

座っている喜助が平子を見上げる。まだ目には涙がたまっていて、キラキラとしていた。

『喜助が好きや』

『え?』

浦原が目を見開く。
想いを込めてもう一度言う。

『喜助、好きや。俺とつきおうて』

『ボク、男っス』

『しっとるわ、ぼけぇ。』

『じ、冗談ですか?』

『誰がこんなことわざわざ深夜に冗談いいにくるか!』

平子が座っている浦原の前に膝まづいて手をとる。

『喜助、俺のこと好きやろ?』

『…リサさんから聞いたんスか?』

浦原が苦笑いをする。

『ずるい人だ』

拗ねたように、でもまっすぐ平子の目を見る。
お互いの想いを確かめるように見つめあった。

『リサには会っとらん。(話はきいたけど)今日いわな、もう言えん気がしたんや』

『平子サン』

『ん?』

『ボクも好きです。』

『うん。せやろ』

平子が言って笑う。

『ずっと一緒にいてください』

浦原も笑顔で言う。

『おう』

平子は急に照れ臭くなり、前から隣に移動する。

『明日も来てええ?』

『もちろん!平子サン来ないと調子出ないっス』

更に照れくさくなり、

『じゃあ、もう遅いから帰るわ…』

と、平子が立ち上がった。
その腕を反射的に浦原が掴む。

『喜助?』

『あ…平子サン…』

浦原が目を閉じた。
そうするつもりはなかったのに、なぜかキスをねだったような形になってしまい、恥ずかしさに赤面した。

(あ〜どうしよう、平子サン、引いてるっスかね!?)

と目を開けるべきか悩んでいると、
ちゅっと、柔らかな感触が唇に触れ離れていった。

『ほな、お、おやすみなっ!!早く寝るんやで!!』

と、平子が空にかけ上がっていく。


(しばらく眠れないっス、平子サン…)

唇の微かな温もりに触れ、温かい気持ちになった。
浦原は恋の幸せに浸りながら、ぼんやりまた月を見上げた。

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