text(平浦)
□誤解だってば!!(ただ、〜の続き)
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『シンジ戻ってるか!?』
普段見せないような慌てた様子のリサに、リビングで待っていたメンバーは驚く。
『ハッチ、水!!』
キッチンにいたハッチにリサが言う。
『あ、ハイ』
ハッチが持ってきた水を飲み干すのを待ちきれなかったひよ里が口を開く。
『シンジならコンビニ行くゆうてさっき出ていったきりや、それより喜助はどないやってん!』
『どないもこないもないわ、シンジのやつ浦原商店まできてん!!おまけに誤解して逃げよって…追いかけたんやけど、ご丁寧に霊圧まで消して…』
まだ息が整わないリサの話に、みんな疑問の嵐だった。
『コンビニ行くなんて、ちょっとわざとらしかったんだよね。別に用もなかったのに。』
『誤解ってなんだよ、なんかやばいとこみたとか?』
『ね〜、結局キスケッちは好きな人いたの〜?』
『なんやわからん!!最初っから話せや!!』
キレそうなひよ里に言われ、リサは浦原商店での出来事を話した。
話終わった直後に、拳西が言った。
『ほらな、他人の恋路に他人が首突っ込むとろくなことにならねえだろ。』
『うっさい、ケンセー!!ちょお、黙っとけや!!じゃあ、喜助もシンジのこと好きやったんか!!良かったやんな!!な!?』
ひよ里が興奮気味に言う。
『でも、ここにも帰って来ないし誤解してるのは間違いないよね。』
ローズが、溜め息をつく。
『探した方が良くない〜?だって今夜行くって行っちゃったんでしょ?行かなくちゃキスケッち変に思うよ〜』
『せやな…、それが先やな。見つけてここに連れてくるか、喜助の所へ直接やな』
『手間かけさせんな!!ウチのリーダーは!』
『まあ、いいじゃないの、いつもいつだって僕らのこと考えてくれてるんだもの応援してあげようよ。せっかく思いあっているんだから』
『このまま、また何十年も中ぶらりんな感じじゃかなわないしな、こっちも。』
『平子サンが、少しでも幸せなら私もうれしいでス』
みんなに好かれて頼りにされて、有能な人物であるのに、実のところ自分のことには至極不器用な平子をできるだけ応援してやりたいと、みんな思っていた。
探す範囲を決めてそれぞれが出ていった。
『ケンセー、さぼんなや』
と、リサが最後に拳西に声をかけた。
『わかってるよ。しょんべんしたら出る』
ぶっきらぼうに言うと、リサが出ていくのを確認してから、平子の自室のドアに向かって言った。
『いつまで、そうやってる気だよ、シンジ』
暫くしてゆっくりドアが開き、平子が出てきた。
『赤いぜ、顔』
『ぅっさいわ…ぼけぇ。』
『誤解は解けたろ?』
『ああ。』
『みんな、心配してやっちまったことだから、怒んなよ』
『わかっとる』
『泣くなよ』
『泣いとらんわ、アホか』
『良かったな』
『何がや、問題山積みやんけ』
『まあ、今夜行ってこいよ』
『わかっとる。このままじゃカッコ悪すぎや』
『あいつら帰ってくると、またうるせえから、見つからねえように行けよ?』
『すまん、拳西』
『気持ちわりいな、謝んなよ』
拳西が笑うので、平子も笑った。
久しぶりに笑うことができた。
今夜、男らしく喜助に言うことができるだろうか。
あまりの緊張に膝までが笑う。
顔にでていたのか、
『おい、変な顔してっと、フラれるぜ』
と拳西に突っ込まれた。
探してくれている仲間には悪いがこっそり出ていく。
後が怖いが仕方ない。
もう空には円い月が出ていた。