text(平浦)

□ふたりでいっしょに3
1ページ/1ページ

常の平子とは違う、真剣な眼差し。欲望を映した瞳。

『抱いてもええ?』

ぎゅっと抱き締められて、浦原は嬉しくて、平子を抱きしめ返す。

『は…』

返事をしようとした時、電話が鳴った。

りりりん、りりりん、りりりん

『あ、電話…』

『かまへん…ほっとき』

平子は浦原の首筋にキスを繰り返す。

りりりん、りりりん、りりりん、りりりん、りりりん、りりりん、りりりん、りりりん…

『…』

『…』

りりりん、りりりん、りりりん、りりりん、りりりん

『しつこいっスねぇ…』

『なんやねん!!』

平子が口惜しそうに浦原から離れ、電話に出る。

『はい?あ、ああ、飯。はあ、ええです、それで。はい。』

ガチャンと電話を切って平子が振り向く。ムスッとしている。

『もうごはんやて』

『あ…さっき中居さんが6時って』

『しゃーないな。喜助。…はよなんか着てや』

平子が浦原から目をそらす。

『あ、そっすね。』

(そういやお風呂場から出たとこで、何にもきてなかった…)

改めて考えると照れるのかお互いに赤くなりながらそそくさと室内をムダに歩き回る。
寝室に入って浦原は置いてあった浴衣を手にとる。

『この浴衣…なんか…』

部屋に合わせてあるのか、まっ黒な浴衣だった。

『まるで死神やろ』

と後ろから平子が答えるように言う。

『僕、今着替え中なんすけど』

浦原が非難するような顔で振り返ると、持っていた浴衣を取られた。

『はよ着ぃ、ゆうたやろ』

バサッと浴衣を開いて浦原の肩に掛ける。

『平子サンが着せてくれるんすか♪』

浦原が嬉しそうににこにこしながら言う。
平子は袖に手を通させ、前を合わせて、無言で帯を締める。

『平子さん、ありがとうっす。あれ、そういえば、平子サンの浴衣は柄ものっすね』

帯を結んだまま帯から手を離さない平子の顔をのぞきこむ。

『俺だけ…なんか?』

『は?』

問われた意味が解らずに浦原が首をかしげた。

『おまえのこと好きで仕方ないんも、キスしたいんも、抱きたいんも、俺だけなんか?』

浦原は予想外の言葉に焦ってしまう。どうしてそんなことを言うのかわからなくて聞き返す。

『そ、そんな、平子サン、なんでそんなこと?』

『そやかて!この一年、キスさえろくにせーへんし!喜助はなんも変わらん…俺だけどんどん好きんなってもうて、頭おかしくなりそうや!!!』

下を向きながら平子が吐き出した本心は浦原にとっては涙がでるほどうれしいものだった。
そっと、平子の手に触れる。

『平子サン。』

『なんや…』

平子が顔を上げると見たことのないほど真剣な表情の浦原がいた。
思わず息を呑む。
ふっ、と浦原が笑う。

『ずっと怖かったんすよ。あんまり平子サンのこと好きすぎて、なんにもできなかった…。一度触れたら、離せなくなりそうで。だから軽い態度しかとれなくなって…』

浦原は指先で平子の唇に軽く触れる。
平子の息を感じるだけで、浦原の胸が熱くなる。

『なに泣いてんねん…阿呆』

平子が浦原の目からこぼれ落ちた涙を親指で拭う。

『平子サンがそんな風に思ってくれてたなんて、うれしくって。僕も相当我慢してたんすよ?』

『っ!!我慢ゆうな。』

『ほんとっすよ。温泉誘って貰えなかったら監禁してめちゃくちゃにしちゃってたかもしれませんよ。』

平子の鼻先に人差し指を押し付けて、浦原が軽く睨み付ける。

『おーこわ。』

平子が両手をあげておどける。
浦原がその手をつかむ。

『平子サンは僕としたいっすか?』

『な…、』

真っ直ぐ聞いてくる浦原に平子がたじろぐ。

『僕はしたいっすよ、すごく』

さらっと言う浦原を平子が睨む。

『さっき、欲しいゆうたやろ。今かてこのまま押し倒したいん、我慢しとんのに!あんま煽んなや…阿呆!!』

平子はここぞとばかりに思いっきり抱き締める。

『うっ…平子さ…くるし…』

浦原の苦情を無視して力を緩めずにいると抵抗していた手が、平子の背にまわされ平子をキュッと抱き締めた。
それを感じて漸く離すと息苦しさからか顔を赤くした浦原がいた。

『平子サン…キス、したいんですけど…』

『んなこと、聞くなや』

チュッと音をたてて、何回も軽くキスをする。
浦原がペロリと平子の唇を舐めた。

『き、すけ…あかん、』

少しずつ深くなる口づけに二人とも立っていられなくなって、ゆっくりとベットに倒れ込む。

『ん、…ふ、ぁ…』

時折お互いに漏れる吐息に過剰反応をしはじめて、浴衣に手をかけた。

コンコン…コンコン…

『平子さまお夕食お持ちいたしました。』

―――!!

平子と浦原が顔を見合わせる。

『夕飯言われとったんやった』

『そうでした』

『離れたない〜!』

『でも、戸の前でお膳持って待ってるっすよ、たぶん』

『わかっとる!!』

いつもいい加減なくせにこんなときばっかり正論を言うと思いながら、平子は浦原を横目にバッと勢いよくベットからでて入口に向かう。

『はい…どうぞ、よろしく』

と、愛想の欠片もない平子に浦原は笑いが止まらず、支度が調うまで寝室で笑っいた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ