text(平浦)

□ふたりでいっしょに4
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モグ…

『お、美味しいっスね、平子サン…』

平子の目が据わっている。

『御代わりはいかがですか?』

中居が笑顔で言う。

『もう、ええです。』

いつもの平子らしからぬ態度に、浦原はただ笑顔を作るしかできなかった。
その雰囲気に中居もなにかしら気まずさを感じたのか、

『では、ごゆっくり。お食事終わりの頃またお伺いします』

と、ペコリと頭を下げる。


『あ、姉ちゃん、飯ゆっくり食べたいから、終わったらこっちから、電話するわ』

平子が呼び止め言う。

『はい。かしこまりました。ご用がございましたらお呼びくださいませ』

中居は愛想よく言って出ていく。

パタンと戸がしまるのを確認して浦原が平子をたしなめた。

『平子サン、よくしてくれてる人に、ぶっきらぼうすぎっスよ』

『なにがや。あん人らはあれが仕事
や。客の機嫌うかがえんと何が中居や』

不機嫌なまま、平子が刺身を口に運ぶ。
浦原は苦笑いをする。
先程、初めて甘い雰囲気になった所を夕飯の用意をするという電話に邪魔をされた。
それ以来ずっと仏頂面をしている。

(分かりやすいっスね…)

浦原は平子の様子が可愛いくて仕方ない。
思わずクスクス笑ってしまう。

『なに笑うてんねん』

平子が、睨んでくる。
浦原はわざと上目遣いに平子を見て、

『平子サン、焦んなくっても、夜は長いっスよ』

と、わざと艶のある声で言った。

『アホか!!わかってるわ!!…何回も邪魔されていややっただけや。あ、ただ…』

平子が赤くなって黙りこむ。

『ただ…なんスか?』

浦原が不思議そうに尋ねる。

『いや、その、なんや、さっき俺が言ったん、覚えとるか?』

『さっき…』

浦原が空を見ながら思い出す。

『喜助がほしい…っスか?』

『ち、違う。その後や…』

『後…ああ!!』

喜助が大きな声を出す。

『なっ、でかい声だすなや!!』

『平子さん、ずっとそこ、こだわってますよね…』

浦原がにやにやして平子を見る。

『なんやねん!!た、大切なことやろ!!』

『ボクはどっちでもいいって言ったじゃないですか。平子サンを抱くのも、平子サンに抱かれるのもボクには一緒っス。好きな人とひとつになれるんスから』

笑顔で、浦原が言った。

『〜!!普通に言うな!!アホ!!』

平子の方が照れてしまう。

『ほんとにええんか?』

『いいっス』

『そか』

『上下なんて、馴れたらかえっこしたりすれば、きっともっとイイっスよ♪』

またしても笑顔でさらりと言う浦原に、

『そやな…』

と、言いかけ青くなる。

『なん!?…き、喜助、おまえっ』

『大丈夫っスよ、優しくしますから』

『違う〜!!』

『ははは。あ、平子サン、ボク平子サンにプレゼントがあるんス』

激昂する平子を落ち着けるように、浦原が言う。

『ここへ来る前、平子サンをおいて、ボクがどこへ行っていたか…じゃーん!!』

ポンッと煙が出たかと思うと、目の前に可愛いガラスのケースに入ったピアスがひとつ。
ケースは赤色のガラスでできているシンプルなものだったが、ピアスは平子の買ったブレスレットのように色が変わる美しいガラス細工だった。

『これ、作ってたんス。ボクが作ったんスよ!なかなかでしょう?まあちょっと手伝ってもらいましたけど…』

自慢げに浦原が言う。

『あ、あれ?平子サン?』

黙ってうつむいてしまった平子に声をかけるが、反応がない。

『もしかして、気に入らなかったっスかね…』

『そんなことあるわけないやろ!!』

と、立ち上がり、自分のコートのポケットから小さい包みを取り出して、浦原に差し出した。

『え。ボクにですか?わわ。うれしいっス!!』

平子は浦原の手にあったガラスケースを受け取り、代わりに包みを置いた。

『開けても…?』

『ええで』

『あ…、これ…』

『お揃いみたいやろ』

平子がピアスとブレスレットを並べる。

『ありがとうございます、平子サン。大事にします』

浦原がにっこり笑う。

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