text(虎兎)

□恋は嵐のように2
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ダブルチェイサーを降り、銀行の正面に回る。入り口のガラスがほとんど割れているから銀行内もよく見える。
『バニー…』
俺は中の様子を伺うバニーに小さく声をかけた。
『…なんですか』
バニーが振り返らずに返事をする。
『なんかひっかかることあんだろ』
俺の言葉に、バニーはちらっと振り返ったが、指で進むことを示唆して移動し始める。
中に誰かいる気配が微かにするが、姿は見えない。
『アニエスさんの話とさっきの爆発、あくまで可能性ですが…。』
壁伝いに中へ進む。
『なんだよ』
『…強盗犯とは別なネクストなんじゃないかと思うんです。強盗犯の中に爆弾を使う人物がいたとしても、自分たちのすぐそばで爆発させるなんてリスクの高いこと、強盗の計画をしていたならありえない。と思いませんか。』
『誤爆ってこともあるだろ、慣れてなかったとか』
俺もそれは考えないでもなかったが、あえて否定してやった。
『…!虎徹さんっ』
バニーが急に振り返る。フェイスが上がり、バニーの顔が見えた。グリーンの瞳が俺を見ていることに何故かドキリとする。
『おっ?!な、なんだよっ、急に振り向くなよっ』
俺は驚いた風を装う。が、バニーはそんな事は気にならないのか、話を続ける。
『それですよ!虎徹さん。慣れてないんですよ。少なくとも爆発を起こしているネクストは、能力に目覚めたばかりなんだとしたら…。だから、支離滅裂な爆発が起きるんだとしたら…』
そう言うバニーの頭向こうに青白い閃光が見えた。
瞬間、再び辺りが爆音と爆風に包まれる。
一瞬だったが、俺は能力発動と同時にバニーに飛びかかり床に伏せた。
静かになると、周りを見回し、目をつむったままのバニーに声をかける。
『バニー、バニー、大丈夫か?!』
バニーがゆっくりと目をあける。
フェイスをあげていたせいで、キレイな顔が汚れている。
『う、ぁ、ハイ。大丈夫です。ありがとうございます。』
手を貸してやると素直に応じる。
軽く頭をふってバニーが起き上がった。
バニーの瞳がまた俺を見た。ああ、良かったと思って、またドキリとした。バニーはぼんやりしているのか、まだ目を離さない。俺もなんだか目を離せないでいると、バニーの目に困惑めいた色が浮かぶ。
『…虎徹さん…』
そう呼ばれて密かに動揺する。
『ん?なんだ?どっか痛いか?』
慌てて聞くと、バニーは更に困ったような顔をした。
『…いえ、あの、手を離してもらえないかと。もう大丈夫ですから。』
ハッとしてみると、助け起こしたまま、まだバニーの両手をしっかり握りしめていた。
『あ、わり。』
慌てて離す。
『い、いえ。すみません』
『…』
『…』
妙な空気が流れてしまう。いたたまれなくなった俺は何か話そうと開こうとした口を塞がれた。
『しっ!』
真剣な顔のバニーの指が口に当たる。
訳はわからないが、俺もバニーと一緒に耳をすます。

『…たす…け、て…』

微かにそう聞こえた。

『誰かいる!助けてって!!おい、大丈夫か?!怪我してないか?』
俺は立ち上がって声の方に近づく。
『虎徹さんっ!』
バニーの焦るような声がする。
10歩ほど行くとすぐ脇のデスクの影にうずくまる人影があった。
『虎徹さん…‼︎動かないで!!上見てください!』
またバニーの焦る声が聞こえてくる。
『上⁈上って…‼︎だっ‼︎な、なんだこれ!』
天井には丸い形の水の玉がざっと見ただけでも2、30ある。大きさもバラバラだが、何の支えもなく空中をプカプカと浮いていた。俺はその真下辺りに入っていた。
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