本日もまた晴天なりにて
□ラーメン×孫×彼氏
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竜崎が朝一番に見たのはサヤではなく奇妙な生き物だった。
卵型の体型をしており、体の側面からはくるんとカールした白い毛のようなもの。指のない手足、肩に付いているのは羽根か。腹には卵らしき球体がカンガルーの子供を収納するそれだ。首がない大きな顔には白目のないつぶらな黒目と顔の大きさにしては不釣り合いな小さな口。
『あ、おはようございます』
「……おはようございます」
『どうぞお掛けになってください』
「……あの、貴方は一体」
『ああ、申し遅れました。わたくしはナナです。マスター、サヤに仕えております』
「……そうでしたか。私はLです、ややこしいですがここでは竜崎と呼んでください」
『大丈夫です存じています』
「知ってましたか」
『マスターに関することは全部把握しています』
「……凄いですね」
食卓にはフレンチトーストと牛乳があり、フレンチトーストは焦げが丁度良い茶色、溶いた卵が中まで染み込んでいるようで中々である。
一口、
「…!、私好みです」
『よかった、普通より数倍甘くしているんです』
「サヤに味が似ていますね」
『マスター直伝ですから』
「その手でどう作るのかとても興味があります」
『秘密です』
***
『マスターは朝慌てて仕事に向かいました、いつもより早く』
「サヤは何を?」
『マスターの知り合いがやっているお店で。飲食店ですね』
「……昼に行ってみましょうか」
『マスターも喜ぶと思います』
「場所を教えてくれませんか」
『今地図に、これお金です』
「どうも」
『あ、今まだ時間ありますよね?』
「はい」
『なら、自分の食器は自分でお願いします』
「出来ません」
『教えますよ』
「というよりやりたくないです」
『時間ありますよね』
「やりた―」
『やりなさい』
「……」
『やれ』
「……………………」
その後十分間台所から皿の割れる音が絶えなかったと云う。