本日もまた晴天なりにて

□ラーメン×孫×彼氏
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渡辺陽一はラーメンと友情に熱い六十二歳で、“青陽(せいよう)”の店主である。何処にでもあるラーメン屋で、特に不味くもないラーメンだったが当時六歳だった彼に衝撃は大きすぎた。熱々のスープによく絡む麺、その麺をすする音、麺だけではラーメンとは言えないチャーシュー、メンマ、半熟ゆで卵、きくらげ、彼等引き立て役がいて「ラーメン」となる。

“ラーメン屋になろう”

陽一はこれと決めたら一直線の男であった、ラーメンの事となるとそれ以外は見えなかった。少ないお小遣いを貯め三ヶ月に一回は必ずラーメンを食べていた。誕生日にはラーメン関係の雑誌ばかり。当然そんなのばかりなので友達と呼べるものは月島清太、ひとり であった。

陽一と清太は幼なじみであった、 いけいけどんどんな陽一とは対照的で落ち着きがありどんな事にも寛容な性格をしていたため相性が良かった。二人の絆は固く、何年、何十年、清太が亡くなっても続いた。

清太は今から二年前に亡くなった。残されたのは清太ののサヤ。清太の孫は俺の孫も同然、当時二十二歳のサヤを見守り支えた。

そして現在、サヤとこの命々軒を切り盛りしている。青陽は知るひとぞ知る穴場であり、一度行ったらまた来たくなるそんな場所。陽一は客への配慮も怠らない、彼に言わせればラーメンを食べに来てもらってるのにそんな失礼なこと出来るか、とのこと。女性も気軽に行けるような内装や、サイドメニューの充実(サイドメニューはサヤが店にきてから)。リピーターが増える理由の一つである。


***


いつもより早い時間に出勤してきたサヤに驚いていた。来た時間に驚いたのではない、出勤してきた時の髪型が荒ぶっていたことに驚いていた。遅れもせず、髪も整える仕事に誠実なサヤがこんなになるなんて何かある、陽一は眉間に皺を寄せた。
サヤを観察し続けながら開店準備をする。気になって仕方ない、何かあっては大変だ、清太が護った子なんだ。俺が守ってやらないと。何だ何があった、………………まさか。
サヤの目に赤色を発見した陽一の眉間の皺が、また増えた。そして、サヤの顔を真っ直ぐ見据え。


「男か」

「!?」

泣かされたのか、よしそいつぶん殴ってやる。
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