本日もまた晴天なりにて
□ただいまと言う人、おかえりと言う人
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「ただいまー」
玄関まで出迎えてくれた竜崎に倒れるように抱きついた。
「お帰りなさい、ご飯出来てますよ」
「先にシャワー入ってくる」
「じゃあ、温めておきます」
サヤは、突然顔を上げた。
「なんか、逆だ」
***
「確かに立ち位置逆ですね」
淹れたコーヒーを渡しながら隣に座る竜崎。
「でしょー」
空腹が満たされ、楽な格好でいるサヤ。テレビは適当につけっぱなし、観てるようで観ていない。
「自然とそんな流れになっててビックリしたんだよね。……ぶわっ、これ甘すぎ」
「間違えました、こっちです」
カップを取り替える。
「でもいいですね」
「新婚みたいで?」
「はい」
「エルが新妻?」
「違います」
「でもさっきのでいくとそうなるよ」
「主夫です」
「主夫は家事が出来ないとー」
嫌味ったらしく言ってみる、当然のごとく言われたくなさそうな顔付きをしていた。
「今特訓中です、地獄の」
その顔が面白くて少し笑ってしまった。
「何ですか」
「ふーっ、ごめんごめん」
「まだ始めたばかりなんです」
「そうだよね」
再びごめんと言いながら竜崎の髪をわしわしする、柔らかくて気持ち良い。 触られて少し怪訝そうな顔をしたが無視。
「サヤ」
「なーに」
「いつ結婚しますか」
「エルに戸籍はありません」
「そんなのどうとでもなります」
「そうだね、でもしなくてもいいかな。今のと変わんないよ絶対」
「形だけでも欲しいんです」
サヤは、嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、指輪を買おう。シンプルなやつ」
「私が自分で買いますからね」
「おー」
彼女の指を撫でながら、
「待っていてください」
サヤの目が更に細くなった。
「おっけー」
***
「次いつ休みですか」
竜崎はサヤを後ろから抱き抱えるように座った。そして背中に顔をうずめる。
「定休日は火曜日と土曜日、ちょっとっこそばいからやめて」
「寂しいんです」
「休みもう少しだから、一日中いるよ」
「子どもたちと遊ぶんでしょう」
「エルが来るまでは遊んでたなー。私も暇してたし、でも今回からはエルと過ごす時間の方が増えるね。まあこれからも遊ぶけど」
「本当に好きなんですね」
「うん」
「あー、なんか甘いもの食べたいなー」
「砂糖ならありますよ」
「それはいらない、ってまさか家にあるおやつの全部食べたの!?」
「私はたけのこの里派です」
「いちきゅっぱで安かったのに!」
サヤ、立つ。 テレビの電源は切る。
「コンビニ行くよ」
「私にも買ってください」
「やだ」
今日の夜は少し寒いので上着を着る。
「近くにファミマがありますね」
「お、知ってるね」
「散歩で大方」
「ん、感心感心」
「アイス食べたいですね」
「よーいどん」
「!?」
後ろを振り向きながら一言。
「昨日の仕返しー」
「では勝ったら買ってもらいます」
結局、仲良く食べた。
end