妄想天使
□妄想天使の事情
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「というか本当に誰なの? なんで私ここにいるの? どうなってるの?」
「説明してなかったっけ。ごめんね、あはは」
あぁまたこの悪気のない笑み。
「えーと。ボクはとにかく可愛い女の子が大好きで、常に力になりたいと思ってる天使。そしてあわよくば……って考えてる」
「一言余計だよ」
「今日は空から人間界を物色していて、君がたまたま目についた。暇だし願いを叶えてあげよう、そう思ってボクは心を覗いた」
妄想だらけの心を覗かれたですと!?
「君は現実を嫌っていた。普通の生活を送れているにも関わらず、不満ばかりで心は汚れていた」
……そうだ。私は不幸な境遇に居るわけでもないのに、全てに病んでいた気がする。
「だから一度違う世界に飛ばそうとした。普通に命のやりとりをしている世界で生活してもらって、君が死んだら元の人間界に戻れるようにしようとした」
「……うん? なんで過去形?」
「よく気がついたね。実はボクの手違いで、死んでも元に戻れなくなっちゃったんだよね。つまり死んだらジエンド、もう元の世界に戻れない」
「ええっ! 危険な世界に送るだけ送って死んでおしまい?」
「そうそう。ごめんね」
ええっ! なんてついてないんだろう!
現実が嫌で、一時は死にたいとさえ思っていた日常。いざというときになると、やはり命が惜しい。私って最低だ。
「まぁそれは可哀想だからね。オプションをつけてあげるよ」
「オプション?」
「君を、強くしてあげる。力をあげるよ」
『神の遊び“ゴッドミラー”』
相手に受けた攻撃を鏡のようにそのまま反射する。ただし物理攻撃のみ。また、相手の手から離れた物の攻撃は反射することが出来ない。例、刃物を投げつける。
一通り説明を受け、思ったこと。これ、ハンターハンターの念能力みたい。
「これから君を待ち受ける世界は、普通に人が殺されるところだ。きっと今までの平穏な生活に戻りたくなるだろう」
「急にキャラ変わってない?」
「命のやりとりを実際に見て、感じた時、君は人として大きく成長するのだ」
「え、どうしたの一体 」
「さぁいけ! 君の念能力を駆使し、新たなる冒険を始めるのだ!」
「!」
今、念能力って言った?
そう聞こうとした時、足元がふわりとする。思わず下を見下ろす。
あれ? クロロみたいな人が居る。
「…………っ!」
って! どういう状況!?
把握するよりも前に、体が落下を始める。
「っいやああぁぁあ!??」
瞬く間に地面が近くなる。
わぁ! 大ピンチ!
クロロみたいな人が手を広げて受け止める体勢に入る。心底無理だと思った。受け止められるわけない。
あぁ、死んだな。短い人生だった。
そして私は意識を手放した。
妄想天使の事情
(グッバイ現実、ハロー妄想)
(あれ? 逆かな?)