妄想天使
□妄想天使、成長中
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その日、いつものように二人は鬼ごっこをしていた。
『じゃ、鬼ごっこしようか』
『最近ちょっと本気出してるでしょ』
『シエラもだいぶ力がついてきたからね』
『はあ、いつになったらシャルから逃げ切れるんだろ……』
『一生無理だよ』
『一生!』
『まぁもし30分逃げ切れたら、何でもしてあげる。団長とのデートの約束でも取りつけてあげるよ』
『本当!!?』
あの時のシエラの目付きは、まさに獲物を狙う野獣のようだったとシャルは語る。
かつてないくらいの全力の鬼ごっこ。最近はオーラを使って色んな工夫をするようになってきていて、地面にオーラを放って砂煙を立てて目眩ましをしたり、木々を倒して妨害したりするらしい。
そんなこんなで、初勝利に至る。
「……どんだけ団長命なんだろうね。でもシャルから逃げ切るなんて、やるじゃないか」
「オレも結構本気だったんだけどね。強くなってきてるよ、シエラは」
少し寂しそうにシャルは笑った。
「好きなのかい?」
「え?」
「シエラのこと」
「……分かんない。でも、多分、好きかも」
曖昧な答え。珍しい。シャルは来る者拒まず去る者追わず、というやつだ。
「もっとストレートにいかないと、シエラは気づかないよ」
「だよねー。まぁ、オレは傍に居れたらそれでいいんだよ。今はね」
「焦れったいね」
「オレもそう思うよ」
妄想天使、成長中
(意外と罪な女だね、シエラ)