妄想天使

□妄想天使、成長中
2ページ/2ページ

その日、いつものように二人は鬼ごっこをしていた。


『じゃ、鬼ごっこしようか』

『最近ちょっと本気出してるでしょ』

『シエラもだいぶ力がついてきたからね』

『はあ、いつになったらシャルから逃げ切れるんだろ……』

『一生無理だよ』

『一生!』

『まぁもし30分逃げ切れたら、何でもしてあげる。団長とのデートの約束でも取りつけてあげるよ』

『本当!!?』


あの時のシエラの目付きは、まさに獲物を狙う野獣のようだったとシャルは語る。

かつてないくらいの全力の鬼ごっこ。最近はオーラを使って色んな工夫をするようになってきていて、地面にオーラを放って砂煙を立てて目眩ましをしたり、木々を倒して妨害したりするらしい。

そんなこんなで、初勝利に至る。


「……どんだけ団長命なんだろうね。でもシャルから逃げ切るなんて、やるじゃないか」

「オレも結構本気だったんだけどね。強くなってきてるよ、シエラは」


少し寂しそうにシャルは笑った。


「好きなのかい?」

「え?」

「シエラのこと」

「……分かんない。でも、多分、好きかも」


曖昧な答え。珍しい。シャルは来る者拒まず去る者追わず、というやつだ。


「もっとストレートにいかないと、シエラは気づかないよ」

「だよねー。まぁ、オレは傍に居れたらそれでいいんだよ。今はね」

「焦れったいね」

「オレもそう思うよ」





妄想天使、成長中
(意外と罪な女だね、シエラ)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ