妄想天使
□逃げた妄想天使
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シエラ逃げちゃったから、今回の入金はいつもの半額でいいよ
イルミからのメールにクロロは首を傾げる。
逃げた? あのシエラが、イルミから?
「団長、シエラいつ帰ってくるの?」
「……帰ってこないかもしれないな」
「え?」
「今イルミから連絡があった。何でもイルミを振り切って逃げたらしい」
口元を押さえ、眉を寄せるシャルナーク。
「何それ」
「信じがたいな。本当に逃げたのか、あるいは……」
それ以上は言わなかった。
「縁があればまた会えるさ。これからは今まで通り、普通に暮らせばいい」
「……了解」
結局シエラが何処まで“知っているのか”は分からない。
クロロの能力や、もしかしたら他の団員の能力も予知能力で知っているのかもしれないが、仮にバレても命に支障はきたさない。
このアジトの場所だって、シエラのことだから把握してなさそうだし、分かっていたとしても周りにバラすことはなさそうだ。
思い出すのは、楽しそうなあの笑顔。極悪非道のA級犯罪者集団のことが好きだと言う、変わり者。
……これで良いのだ。
これ以上“あってはならないもの”がここにあったら、蜘蛛はおかしくなってしまう。一瞬の油断が命取りなのだから。
逃げた妄想天使
(優しさ、笑顔、思いやり、愛)
(全て蜘蛛には必要のないものだ)