妄想天使
□不思議な妄想天使
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不思議な子だった。
しばらく姿を見ない間に感じた違和感に自分でも驚く。
帰ってこないかもしれない、という知らせを受け、あぁ、帰ってこないんだな、と冷静に受け止める自分はやはり冷徹だと思う。
もしこれがパクだったら少しは悲しかったのだろうか。いや、きっと同じことだろう。
アタシは多分、冷たい人間だ。
「シズクはシエラって子知ってる?」
「知らない。誰それ?」
「弱いのか強いのかよく分かんないやつなんだけど」
「ふーん」
興味なさそうだね。
でも、それが本来の姿。
蜘蛛は蜘蛛以外認めない。
はずだったのに、シエラはあっさりそれを砕いた。
生きているのか死んでいるのか分からない。
もし生きているのなら、またここに来てほしいとも、普通の場所で普通に暮らしてほしいとも思う。
「……げ。ヒソカからメールだ」
「何て?」
「天空闘技場に来てくれ、だって」
「何で?」
「! 怪我の治療……」
シエラの言った通りだ。
「あ、マチ。9月1日のこと団長から聞いた?」
「ああ。暇なやつ改め全員集合ってやつだね。ついでにアイツに直接伝えてくるよ。参加率悪いから、念を押さないと」
蜘蛛の頭は存在するし、手足も欠けてはいない。蜘蛛はいつものように動く。ただ、それだけ。
不思議な妄想天使
(頭でも手足でもない、大事な何か)