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□一方通行 (※男主)
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一目惚れに近かったかもしれない。初めて会ったあの日から、オレは彼女を追っていた。
「なぁ」
「何」
「好き」
「うるさい」
想いが伝わることはない。というよりも受け入れてくれることはない。何故なら彼女、マチの中には大事な人が居るからだ。
「クロロなんてやめとけよ」
「は?」
「あいつが好きなんだろ」
「あたしは恋愛なんてしない。団長は尊敬してるだけだ」
「じゃあ嫌いなわけ?」
「そうとは言ってない」
「好きなんだろ」
「尊敬してる」
相変わらず強情。この女をオトしたい、とオレの脳が訴えている。
「オレは好きだよ」
「知るか」
「キスする?」
「する訳な…」
隙を見て、マチの頬っぺたにキスをする。すぐに拳が飛んできたが、受け止める。
「危ないなー」
「っお前が悪いんだろ!」
「動揺してる? 反撃が単調すぎ、今のは誰でも受け止めれたよ」
「そういうところがムカつくって言ってんだよ」
腕組みをし睨み付けてくるマチ。ああ、ゾクゾクする。
「アタシはあんたなんて大嫌い」
「何で?」
「ヒソカに似てるから」
目を見開く。ショックで固まる。
似てる? オレとヒソカが?
「う、う、嘘だろ」
「いや。変態だし、人の嫌がる姿を見て喜んでるし」
「人の嫌がることは進んでしましょう、って小学校の先生に習ったよ」
「意味が違うだろ」
的確なツッコミに惚れ惚れする。しかしこんなのはオレの趣味ではない。オレは常に攻めていたい肉食系男子だ。
「ね、マチ」
「何」
「付き合おうよ」
「……」
「上手く行くよ、オレらなら」
「……いや、無理」
「無理じゃないって。抱いてやろうか、ならオレに惚れるから」
「言ってろ」
手を伸ばせばそのまま掴まれ膝蹴りが飛んでくる。左手で防御し、そのまま抱き締める。
「っムカつく奴」
「可愛いやつ」
「離せよ!」
「自分で離れれば?」
押し黙るマチ。抵抗をやめ、殺気を出してくる。
「殺気が邪魔ー」
「殺したい気持ちを抑えきれない」
「オレマチになら殺されてもいいよ」
「……やめた。手が汚れる」
「ばっちぃもん扱いかよ」
「早く離せよ」
「ずっとこうしていたい。駄目?」
「駄目だ」
「ケチ。マチケチだな」
「本気でムカつく」
あはは、と笑いマチを解放した。
「オレがクロロなら抵抗しなかった?」
「ナマエ」
滅多に名前を呼ばれることがないため驚く。途端に心臓が早く大きく脈打った。
「アタシがアンタを殺さないのは団長命令を受けてるからだ。団長を心から尊敬してるし、勿論嫌いじゃないから好きの部類には入ると思う。だけどこれ以上馬鹿にするようなら、本気で許さない」
マチの真剣な瞳にうっとりする。
だがオレはヒソカのようにそれで興奮するような変態ではない。普通の慣性を持っている。はずだ。
心に多大なダメージを受けたが、気づかれないようにへらっと笑った。
「そんな本気で怒るなよー。可愛い顔が台無しだよ。まぁオレ行くわ、見たいテレビがあるから」
逃げるようにその場を後にする。
完敗だった。
最初は顔だった。つり目美人はストライクど真ん中だった。
性格もタイプで、一方的な恋愛は深まるばかり。
クロロを大切に思うマチが可愛くて、マチに大切に思われたくて、いつも空回り。
「……でも諦めきれないんだよなぁ」
マチって魔性の女だな。ヒソカの気持ちは分かりたくないが分かりすぎる。
……馬鹿だな、オレもヒソカも。
一方通行
(Uターンは許されない)