妄想天使
□妄想天使は物知りさん
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空から落ちてきた不思議な女。あれから三日、起きる気配はまるでない。
彫刻のように美しい顔。美術品のようだ。微かに上下する胸が、この女が生きていることを主張している。
「ここまで綺麗な人間も珍しいな」
そういうクロロも端麗な容姿である。美男美女といえるだろう。
「………ん…」
長いまつげがピクリと揺れる。徐に開かれた瞳は気だるそうだ。
一度目を閉じ、そしてまた開ける。今度はハッキリと。思わず息を飲む。なんて綺麗なのだろうか。
女はクロロと目が合うと、目を見開く。口まで開いている。
「………ロだ」
「え?」
「クロロだ、クロロだっ」
一気に警戒を強める。初めて会う人間に一方的に知られている違和感。
「どこかで会ったか?」
警戒しながら、かつ少し笑いながら相手の様子を窺う。
「会ったことないけど、知ってる。ようやく会えたね………クロロ」
危険人物。分かっている。しかし、女の伸ばした手を拒むことはしなかった。悪意を全く感じなかったからだ。
女の手をとり、体を起こしてやる。そしてそのまま抱擁をした。
不思議な匂いに頭がクラクラする。永遠にこうしていたいとさえ思う。と、女の状態が変わる。息が荒い。
「はぁ、はぁ、はぁ………!」
「どうした」
「クロロ………ッ」
潤んだ目を向けられ、理性がとびそうになる。
「憧れのクロロに抱きついてる、抱き締めてもらってる………そう考えるだけで、私………!!」
つー、と女の鼻から赤色。
「………鼻血?」
「興奮しちゃうの………」
妄想天使は変わり者
(天使か? 変質者か?)