妄想天使

□妄想天使の事情
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私の名前はシエラ。

年は内緒。乙女だから。好きなことは妄想、得意なことも妄想。好きなものは甘いもの全般。嫌いなものは現実。

でも、今この瞬間起きていること。夢のような現実。大好きだ。



あの日私はいつものように妄想をしながら過ごしていた。
仕事をしていたんだっけ、学校に通っていたんだっけ、最早曖昧だが、とにかく次の日のことを考え憂鬱になっていた。

その時だ。突然頭に激痛が走り、目の前が真っ白になった。眩しくて、思わず目を閉じる。それなのにまだ眩しくて、本当に妙な感覚だった。


「なに、これ……」


当たり前の疑問が口に出る。当然、返事はない。


「ようこそー!」

「えっ、まさかの返事きちゃったし」

「あはは、ナイス突っ込み」

「ありがとう、で、誰かな?」


何もない真っ白な空間。いつの間にか遠くの方に、ぽつんと人影がある。


「ボクはね、夢見る乙女に希望を与える可愛い天使だよ」

「痛いわこの子」

「自分よりボクが可愛いからって僻まないでくれる?」

「いやいや遠くて見えないから」

「あ、そうなの?」


音もなく、気配もなく、人影は一瞬消えて目の前まで移動した。


「うわ!! びっくりした!」

「あはは、いい反応だね」


目を細める人物。
カールした輝かしい金髪、優しそうな眉、サファイアのような美しい瞳の下には泣きホクロ。筋の通った鼻、子悪魔的なぷっくりとした赤い唇。まさに妄想上でしか存在していないと思っていたような綺麗すぎる顔立ち。

か、可愛い……。

腹黒そうな笑顔を浮かべているのが残念でならない。


「あれ。男の子? 女の子?」

「どっちだと思う?」

「……男の子?」

「正解。可愛すぎるからよく女の子に間違えられるけど、男だよ。ちゃんと性的対象は女の子だからね」

「聞いてないんだけど」

「タイプのお兄さんを見つけたら時々食べられてあげるけどね」

「聞いてないんだけど」

「君みたいな可愛い女の子が一番の好物だよ」

「……」

「あはは、顔色が真っ青だね。大丈夫、さすがに処女は可哀想だからね」

「こいつ!!」


この短時間でこいつの性格が分かった。可愛いけど性格が悪くて、変態で、腹黒い笑顔で「あはは」と言うのが口癖なんだろう。
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