妄想天使
□妄想天使とカタルシスの仮面
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一週間とは早いものである。
瞬く間に時間は過ぎ、時刻は間もなく17時。
シャルナークは隣のシエラを見た。
白いドレスは装飾が少なめで、上品だがどこか儚くも見える。幻想的な雰囲気がシエラに合っていた。
ああ、美しい。メイクを施した綺麗な顔は心なしか青かった。
「大丈夫?」
「死んじゃうよ。死んだらジエンドなんだよ」
「あはは、死なないって」
「……シャルって自称天使と同じ笑い方するんだね」
自称天使?
彼女の友達だろうか。
溜め息を吐くシエラ。時計を見て絶望的な表情になる。
「17時だ……」
「よぉ」
ギリギリにフィンクスが現れ、メンバーが揃う。
シエラ、シャルナーク、クロロ、フィンクス、そしてパクノダ。
仮面がどこにあるか分からなかったため、彼女を呼んだのだ。
「では行くか」
シエラは渋々頷く。泣きそうな顔だ。
「オレが守ってあげるからね」
シエラは何度も何度も頷いていた。
何をそんなに怖がっているのだろう。オーラを見る限り、弱くはないのに。
「着いちゃった」
もはや諦めているのだろうか、シエラの表情は少し明るくなっていた。これから惨殺が行われるとは思ってもいないようだ。
「シャル、いっぱい殺すの?」
「!」
いや、シエラは分かっていたようだ。不安そうな面持ちでシャルナークを見上げる。
「……多分ね」
直視できず、ただ曖昧に誤魔化す。そうか、この子は人が死ぬのを恐れているのかもしれない。
ゴキッ
骨の折れた音だ。フィンクスが仮面を奪うために客を殺したのだろう。
「シャル、仮面いるか?」
「うん、貰うよ」
フィンクスの足元には首が可笑しな方向に曲がった死体がいくつか転がっていた。投げられた仮面を受け取り、シエラに渡す。
「はい」
「……ありがとう」
声も、小さな手も震えていた。
もしかしたら使い物にならないかもしれない。それだけならまだいい、足を引っ張られたりしないだろうか。
長年連れ添ってきた仲間と、興味のある女の子。
どう考えても前者の命が優先だ。いざとなったら殺すことも考えなくてはいけないな。
シャルナークは無意識に冷たい目でシエラを見下ろした。