妄想天使

□妄想天使と恋心
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「シエラー、起きなさい、朝よー」

「うーん、あと五分だけー。……ふぅ、これが悪夢だったとは」

「失礼だな、ボクが出てきたんだからいい夢に決まってるでしょ」


いつか見た真っ白な空間に、黙っていれば可愛すぎる男の子が寝そべっている。


「調子はどうなの?」

「死にかけた」

「知ってる。あはは」

「こいつっ……」

「いいんじゃないの、命の大切さを知れて」


ふっ、と微笑むこいつに言い返せない。悔しながら言う通りだ。


「私、人を殺しちゃったよ」

「うん」

「……どうしよう」

「罪にはならないさ」

「でも、殺したことに変わりはない」

「殺らなきゃ殺られてた、そうでしょ?」

「……うん」

「いい人生経験だよ」

「そうだね。これからは命を大切にするよ。じゃあ、元の世界に…」

「帰れません」

「ですよね」


まぁいいけどね、こっちの世界気に入ってるし。


「ねー天使さまー」

「何なの、天使さまって」

「そういや名前知らないんだもん」

「そうだっけ」

「教えてよ」

「内緒」

「じゃあいいや」

「いいんかい」

「それより! 聞いてよー」

「何?」

「クロロが冷たい」


そして目の前の天使さまも冷たい視線。


「それはキミがうざいからでしょ」

「うわ、ひど」

「いい? 恋愛初心者のシエラちゃんに教えてあげる。男は追われるより追いたい訳よ。野性本能ってやつ? 男は獲物を狙うライオンだよ」


そういってガオーと真似をする天使さま。可愛いなー。


「ヤるだけだったら追われてる方が楽だけどね」

「聞いてないことばっかり……」

「ほら、ボクって可愛いでしょ? この前なんかさぁ、いきなりホテルに…」

「いいです、聞きたくないです!」

「そう? 相変わらずウブだね。でもそのうち男を知ったら、ボクみたいに経験豊富な男とヤりたくなるよ。その時は遠慮なく言ってね」

「言いません」

「ていうか早くヤりなよ。花の打ちに色々ヤらないと」

「この人下ネタしか言わない……悪夢だ……」

「ボク処女とはヤらないって決めてるからね。結婚とか迫られたら重いじゃん、だから早くシてよ」


可愛い笑顔にキュン。駄目だ、こいつ今最低なこと言ってるのに……!

ずきん、頭が痛む。


「あ、そろそろ意識が戻るかな?」

「頭、痛っ……!」

「まぁ上手くやりなよ。頑張ってねー」


ぐいっ!

と体が引っ張られるような感覚がして、急に体が重くなる。
ああ、戻ってきたんだ。
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