妄想天使

□妄想天使と殺し屋長男
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車内に音楽がない。イルミって音楽好きじゃないのかなぁ。それにしてもどこに連れていってくれるんだろう。今日はタノシイデートの日!

……なんて。ああ、まさかの展開。

運転する彼の横顔は綺麗で芸術的だ。


「何?」

「……え」

「オレのこと見たでしょ」

「見てないですよ」

「……」

「……」


ごめん嘘です見てました。イルミがすごい自意識過剰みたいになってるけど、私本当は見てたんです。


「……ジェット機に乗るから」

「あ、はい」


車が止まり、見るとジェット機とスーツ姿の男性。頭を下げ、車のドアを恭しく開けた。


「行き先はご自宅でよろしいでしょうか」

「うん」

「失礼ですが、そちらの方は?」


怪訝そうに私を見る。そりゃそうなるわ。


「オレの恋人?」


なんで疑問系なんだ。バレるよ! キキョウさんにバレて私お陀仏だよ!


「それは大変失礼致しました」

「えーと、シエラだよ」

「ではイルミ様、シエラ様、お乗りくださいませ」


シエラ様だって、なんか痒いなぁ。

機内に入るとふかふかの絨毯。トイレもベッドもあるし、飲み物や軽食も用意されている。

部屋のようだった。というかホテルのようである。


「オレんちパドキアなんだよね」

「ここから遠い……ですよね」

「当たり前じゃん。バカ?」


うう、ひどい。


「それなのにわざわざ出向いてくれたんですね、クロロのために」

「別に。こっちで仕事あったから丁度よかったし」


あれ、これってもしかしてツンデレフラグ?


「イルミさんてツンデレなんですか?」

「何言ってるの?」

「ごめんなさい」


イルミは真顔で首を傾げた。私が可笑しい人みたいで嫌な気分。


「敬語やめてよ。恋人らしくしてて」


そっか、恋人に敬語って可笑しいよね。でもそんな急に言われてもなぁ。無理無理無理。


「うん、わかった」


まぁそう言うしかないよね。私小心者すぎる。


「せっかくだから恋人らしいことする?」

「……は?」


ぎゅ、と手を握られる。そのまま引っ張られて、ベッドまで連れて行かれる。


「ちょ、ちょっと!」

「大丈夫だよ防音だから」

「ちがっ、わぁ!」


そのまま押し倒されて目を瞑る。


「わぁ、って。シエラって色気無いね」

「文句言われる筋合い無いわ! いやああっ、手が!」

「抵抗しないでよ。そういうプレイが好きなの?」


イルミって積極的なんだね! なんかシャルと被るんだけど。これがもしクロロだったらなぁ、なんて考えていると服のボタンが外される。


「イルミ! ストップ! 怒るよ!」

「もう怒ってるじゃん」

「私にはクロロがっ」

「付き合ってないんでしょ? あ、片思い?」

「グサグサ刺さるよその言葉……」


涙出そうだよ。
傷付いていると、イルミは何故か解放してくれた。


「えっ……」

「何。不満? ヤりたくなった?」

「違うわ!」

「そ」


ソファーに座り、紅茶を飲むイルミ。私も便乗してみる。


「シエラって、素はあんな感じなんだね」

「それを知りたかったのか……他に方法があっただろうに」

「こっちの方が面白いじゃん」


なんで私の周りには優しい男性が居ないんだろう。
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