妄想天使

□妄想天使も女の子
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「あらあらシエラさん、大変似合ってますわよ!」

「本当ですかっ」

「これも着てみて頂戴。まぁどうしましょう! 貴女って何でも似合うのね!」

「やだーキキョウさんったら!」

「こんな素敵な彼女だったら、イルミももっと早く紹介してくれたら良かったのに」

「イルくんはシャイなんで仕方ないですよー」


キャッキャッ。
フリフリのキラキラの可愛らしい洋服を着て、私ははしゃいでいた。キキョウさんとは、あっさり打ち解けた。


私は妄想が好きだ。趣味であり特技だ。

もしもイルミと付き合うことになったら、と妄想してみた。

私は殺し屋をしていて、三年程前に偶然助けられ、去年再会して意気投合し付き合うようになった。
彼のファミリーネームかゾルディックだと知り、私なんかには不釣り合いだと身を引こうとした。
しかしイルミからの猛アプローチに決意は揺らぎ、自分の気持ちに嘘はつけないと気づいて今回の挨拶に臨んだ。

……と設定しておきキキョウさんとの対話を開始すると、もう本当にリアルなくらい話が進む進む。

途中涙ぐみながら、いかにイルミを愛しているか力説しながら「ねぇイルくん!」と言うと、イルミは無表情で「……うん」と肯定し、キキョウさんもハンカチで涙を拭いながら二人の交際を認めてくれたのだ。


「シエラさんがお嫁に来てくれるならアタシも嬉しいわぁ」


キキョウさんごめんなさい。私もイルミも結婚する気はサラサラ無いのだ。


「結婚式の日取りはいつにしましょうか」

「そ、それはまたイルくんと決めますね。この素敵なドレスを見てもらいたいから、イルくんのお部屋に行ってもいいですか?」

「ええ、そうね! 喜ぶと思うわ。結婚式にはシエラさんのお家の方いらっしゃるのかしら?」

「今から相談してきまーす、あはは……」


気が早いなキキョウさん。私は逃げるように部屋を出た。

そして迷った。

困った。


「うーん……」


殺気を感じ、振り返る。少しは気配も分かるようになったし、私ってば成長したなぁ。


「……イル兄様の恋人?」


黒髪ぱっつんの小さな美少女。あ、美少年。


「カルッ…カルタでもしようかなぁ久々に」


危ない危ない。カルトくん! なんて呼んだら警戒されて殺されてもおかしくはない。


「……おかしな人」

「えーと、ゾルディック家の人?」

「そうだよ。こんなところで何してるの」

「イルミの部屋知ってる?」

「ここを突き当たって左に曲がって二つ目の部屋だよ」

「ありがと。じゃあまたね」


あー可愛いなぁカルトくん。あんまり喋ってると余計なこと言っちゃうから、早めに別れる。うーん、慎重だ。
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