愛とは
□六日目
1ページ/1ページ
時刻は19時。もう少しでユーリの仕事が終わるそうだ。夕方から仕事に行くならともかく、夕方まで仕事とは珍しい。
今から行く
そのメールが届いて20分。そろそろ来るだろうと思う。普段使わない高級マンションの角部屋でユーリを待った。
ピンポーン
チャイムが鳴る。開ければユーリ。笑顔で話しかけてくるが、どこか違和感を感じた。
「何かあった?」
「......ヒソカには嘘を突き通す自信が無いなぁ。うん、あったよ。言わないけど」
「力になれるかもしれないよ」
「自分で何とかしたいの」
「それってこの前言ってた殺したいけど殺さない人が関係あるのかな」
「はは、本当すごいね」
否定はしなかった。つまり、肯定だ。
「話聞かせて貰えないかな。」
「......そう、だね」
ユーリは思い詰めた顔をした。
「私は幸せになっちゃいけないんだよ」
「誰が決めたんだい」
「誰、とかじゃない。なっちゃいけないの。でも、それは明日まで。明日になったら全部終わる」
全く話が読めない。
「借金があるの。私じゃないんだけどお父さんがね。すごい巨額で、だから利子も凄くて。返しても返しても追いつかないっていうか......ぶっちゃけると提示された金額を払い終えたら、払い終えるまでに発生した利子を請求されてまた払う、っていうのをずっと繰り返してる」
どうやらユーリの父は悪徳業者にお金を借りてしまったようだ。
「キミの父親はどこに居るの?」
「借金のある金利会社で働かされてるよ。逃亡防止も兼ねてるんだろうね。だから私がお金払わないと、お父さんどうなるかわかんないし。でも明日で終わるんだ」
嬉しそうにユーリは言った。母親のことは聞けなかった。ヒソカは別に両親のありがたみなど感じたことはないが、一般的には感じるということを知っているからだ。
「お父さんに借金があるまま私だけ幸せになるなんてできない。明日、ヒソカにきちんとした返答をしてもいいかな?」
そういうことか。
ヒソカはもちろん、と頷いた。
長いようで短い一週間。あっという間に過ぎて行く。
明日がラストの日か。
ユーリの返答は、どんなものだろう?
NOだったら、自分は一体どうしたらいいのだろう?
もしかしたら首を締めて殺してしまうかもしれない。いいやきっと殺すだろう。
誰かのものになるくらいなら、自分の手で消す方が何百倍もいいに決まってる。
六日目
(さあ、キミ次第だ)