愛とは
□新しいオモチャ
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「ここ、空いてる?」
ヒソカは白々しく声をかけた。ユーリは携帯から目を離さない。
「座るね◇」
ユーリはちらりとヒソカを見た。目は合わない。
「今、忙しいから」
はじめて聞いた彼女の声。思わず震える。一体どうしたというのか。
「アフター専門らしいね」
「……専門、ね。そうかも」
「キミを指名したい。アフターに行こう☆」
「いいけど、私高いよ? お兄さんお金あるの?」
「随分とストレートだねぇ。お金はあるよ、キミの仕事っぷりの情報をお金で手に入れるくらいだからね◇」
「……ふーん、いいよ」
す、と立ち上がりユーリは髪を掻き分けた。動作が色っぽい。込み上げる笑いを抑えることができない。
ユーリに連れられるまま、店の外に出た。
「お兄さんは何が希望なの?」
「そうだねぇ……何があるんだい?」
明るい夜道を歩くこの男女には、カップルには無い壁を感じる。はたから見ても二人を恋人だと思う人間は少ないだろう。
「手を繋ぐのが五千円、体に触るの三万円だよ」
「ヤルのは?」
「さぁ、交渉次第だよ。あと、キスはしたくない」
「キスは一万円って聞いたけど◇」
ユーリは不振そうな顔をする。
「誰かなそんか嘘ついたの。私キスはしないよ」
「ヤってる時も?」
「うん」
ヤルのはよくてキスは駄目なんだ◇
珍しい価値観。なかなか面白い。
「で、どうしたいの?」
「んー…… 、恋人コースかな☆」
「恋人コース?」
ユーリは微かに首を捻る。
「ボクの恋人。日給十万円☆」
少々悩んでいる。
「キスは無し◇」
「……ノった」
「交渉成立だね☆」
「今日から日給は発生するからね」
今日はあと一時間で終わる。なかなか容赦ないやつだな、とヒソカは思った。