長編

□第二章
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 あれからだいぶ時間が経った、最初は狸寝入りしていたアリスだがいつの間にか本当に寝てしっまっていた。

「おい…アリス、起きろ」

誰かに起こされアリスはゆっくりと目蓋を開けた。
 すると目の前に政宗が居た。
そしてアリスは起き上がると障子の間からのぞく日光により現在の時間が昼くらいだと分かった。

『…すまない』

 アリスは政宗に謝った、朝の事についてだった。
それは、彼の左頬が少し腫れていたからだ。

「心配しなくても大丈夫だ、元々俺が悪いんだしな!」


「あと此処の連中は見た目は悪いが悪い奴らじゃない、安心しな」

『…わかった』

誰かが部屋の前に来た。

「政宗様、お持ち致しました」

先程の小十郎だ。

「入れ」

政宗が短かく返事をすると小十郎が何かを持って入って来た。

「朝餉は寝てて食えなかったからな…昨日から何も食ってないだろ、食う気が無くても食え」

と政宗が小十郎から盆を受け取りながら言ったた。

『そう言えば政宗あんたずっと此処に居て良いの?』

「ha!あんたが寝てる間に仕事は全部片付けたから問題はねぇ」

(仕事速い…のかな?…)

「ほら、食え」

行き成り匙にお粥を乗せ口元に近づけた。

「あ〜ん」

とニヤニヤしながら言った。

『ふざけないで!自分で出来るから! っ?!』

隙を見てその匙を口に突っ込まれた。

「どうせ利き手は痛くて使えないんだろ」

『……わかったわよ…』

確かにアリスは朝政宗にビンタした手が未だに少し痛たかった、不服だが政宗に食べさせてもらう方が早く終わると思った。
そしてまた匙を口元に近づけて来たのでまた食べた。

『ふん……』

(何これ美味しいんだけど…)

そんな事を思いながらお粥を食べきった。





「包帯巻き換えるが…一人で出来るか?」

『その位、一人で出来る…』

「そうか…、hey!小十郎!、包帯の換えと薬を持って来てくれ!」

そして、部屋の外で待機していたらしい小十郎が入って来た。

「お下げ致します。」

小十郎が盆を下げ部屋を出て行った。


「それじゃ、俺は中庭で素振りしてるからな、何かあったら呼べよ」

小十郎に続き政宗も部屋から出て行った。

部屋に一人残ったアリスは布団から出て着物(と言っても寝巻きの様なもの)を脱いだ。

アリスの全身に包帯などで丁寧に手当てされていた。
首元からゆっくりと包帯を取っていった。
 しかし、アリスの体には傷などはなかった。
だが、白い肌に痛々しく良く映えている黒い痣が幾つもできていた。

 そう、アリスは只の人間ではない。
アリスは傷を負っても常人ではあり得ない程速く傷が治ってしまうのだ。例え其れが命を落とす程の傷だとしてもすぐに治る、いわゆるアリスは不死身なのだ。

だが今それを政宗達に知られる訳にはいかないのでずっと怪我をしている振りをしていた。



それから、適当に薬を塗り終わると新しい包帯を巻いていった。
後は寝巻きを着るだけだが、アリスは着物などの類いの服は着た事がないため着方が分からなかった。

『政宗に教えてもらうしかないな…』


アリスは着物を羽織り腰帯も持って部屋を出た。

すると政宗が部屋の前の中庭で木刀で素振りをしていた。
ヒュッ、ヒュッと木刀が空気を裂く音が聞こえてくる。

素振りをしていた政宗が此方に気づき木刀を片手に歩いて来た。

「どうした?アリス」

『政宗、あのさ…着物の着方わからないから教えて…』

「ha?分からないのかじゃあ俺が手取り足取り腰…グホォ!」

『良い加減にして!』

アリスが下心丸出しな政宗をまた殴った。




「……そう、右を前にして……帯は前脇で蝶結び…こんなもんだろよし終わりだ」

『ありがとう』

「なぁ…アリスここに来る前何があったんだ?…あんなに怪我して…女だろ……」

『貴方には関係ない』

心配する政宗だが、アリスにはそう答えるしかなかった。なぜならアリスはこの世界とは別の世界から来たもしくは未来から来たかも知れないからだ。
どうしてこの世界に来たかと言うと敵に追いかけられ、逃げているうちにこの世界に迷い込み、そこを政宗に見つけられたのだ。

「政宗様…軍議が始まりますので早に広間へお集まり下さい」

「もうそんな時間か?しょうがねぇな…また後で来る、あとあんまり無理すんじゃねぇよ」

政宗はそう言い残し部屋を後にした。一人静まり返った部屋で遠のいて行く政宗の足音ともう一人の気配を感じ取ったアリスは微笑んだ。

『熾羅、居るのか?居るなら返事して』

誰も居ない部屋でアリスが誰かに語りかける、するとアリスの後ろに政宗より背の高く長い白髪の中性的な男性が立っていた。
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