長編

□第三章
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日の光が西に傾いて来た頃、アリスがゆっくりと起き上がろうとした。

『熾羅も寝てたのね。』

アリスの腹の上で寝ている熾羅に気付き起き上がるのをやめた。
そして自分の腹の上で寝ている熾羅の頭を撫でた。

するとその手に気付いた熾羅がゆっくりと身体を起こした。

「…アリス様、やはり体調が良ろしくないのでは?」

『大丈夫よ、いつもと違って今日は少し眠かっただけ。』

心配する熾羅にアリスが反発した。

「アリス様…いつもと違う。そう言う事を体調が良くないと言うのですよ。それと、顔色が良くありません。血が足りないのですね?」

『確かに3日前ぐらいから血を飲んで無いけど…でもあの人達を巻き込みたくないわ…』

今のアリスの体調を整えるにはどんな薬より血が必要だった。
だか、その一方、アリス血を提供した者は色々な意味でに歩むべき道を踏み外してしまうのだ。

「伊達政宗からもらえば良いではないですか、私達が服従する分、アリス様に血を提供していただく…どうですか?」

『それしかないわよね…やっぱり…。』

今アリスに必要なのは血を提供する者だ。
しかし、アリスの正体をその者に明かさなければならない。
だからアリスは今まで躊躇っていたのだ。

「アリス様、私は最初にこう言いました…この世界は孤立している…と、そしてあの条件を満たしております」

ある条件とは、その世界の人、時間、運命などを自由に操ったり、その世界を壊してしまったとしてもその世界に関係するパラレルワールドなどに全く影響を与えない世界の条件である。

『わかった…契約するわ。』

遂にアリスが折れた。

その時、熾羅が胸元を抑え痛みに耐えるかの様に呻き声を上げた。
「くっ…う!……。」

身体的な痛みを感じない筈の熾羅が痛みを感じるなどあり得ない、アリスはまだ少し気怠い体を無理矢理起こし熾羅の顔色を伺った。

『熾羅!どうしたの?何があったの⁉』

心配したアリスが控えめに熾羅の肩を揺らした。すると熾羅が歯を食いしばりながら訳を話した。

「アリス様っ…この世界に掛けた結界が…一ヶ所、や、破られました。…お、恐らく奴等です…数、は、二体で、す…!」

『何ですって⁉』



スッパァン!!!!!


するといきなり障子が開け放たれた。そこに居たのは敵意剥き出しにした政宗だった。

「アリス…アンタ
さっきから誰と話してんだ…」

障子を開けっ放しにして政宗が部屋に入ってきた。そして熾羅を見た。

「誰だ…てめぇ…」

『私の部下の熾羅よ』

政宗が低くドスの効いた声で言ったが全くそれに臆する事なくアリスが即答した。
そして痛みが引いたのか熾羅が政宗の前に立った。
「初めまして、伊達政宗様、この度はアリス様を助けていただき誠に有難うございます。」

熾羅が先程の事が嘘かの様に思えるほど冷静に政宗に挨拶し一礼した。

『熾羅…もう大丈夫なの?』

「はい、結界を破られた事による一時的なダメージですのでもう大丈夫です。」

アリスが熾羅を心配したが熾羅の痛みは引いたようだった。
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