長編

□第四章
2ページ/3ページ

『たぁ!!!!』



暫くお互いに睨みあっていたがアリスが先手を打った。

アリスは目にも止まらぬ速さで小十郎の懐へ入り込み、木刀を振り上げる。


アリスが動いた事に警戒をした小十郎は受け身を取りアリスの攻撃を防いだ。
だがそれは速く軽そうな見た目に反して重く小十郎を後ろへ仰け反るほどだった。

「チッ…」


自分より華奢な少女の一撃で仰け反るなど思ってもいなかった小十郎は態勢を立て直す為、背後へ飛んだ。


しかし、背後へ飛んだ小十郎を逃がすまいと言わんばかりにアリスが更なる追撃を仕掛けてきた。


小十郎は態勢を立て直す暇も無くアリスの攻撃を受け身で逃がすしかなかった。


小十郎は初太刀の様に…いや、それ以上に強く鋭い攻撃に圧倒された。



アリスの猛攻を止める為、小十郎がアリスを押し返した。


「見た目以上にPowerが有るな…面白くなってきたぜ」


政宗が縁側に腰掛けアリスと小十郎を見つめていた。




「せいやぁ!!!!!!」


小十郎がアリス目掛けて突進すると其の儘鍔迫り合いに発展した。



バキ…バキバキバキ…



二人の手元から樫が軋み折れそうな音がしてきた。




「♪〜」

その様子に政宗が口笛を吹き感心していると何かを思い付いたかの様に小走りで屋敷の方へ消えた。



未だ鍔迫り合いをしている二人の木刀は軋み悲鳴をあげていた。
そして、二人の力に耐え切れずバキバキバキッー!!!!!!と音を立てて折れ、破片が飛び散りアリスの右頬に傷を造った。


二人は同時に飛び退くと小十郎が素手で来いと拳を構えた。

アリスもそれに対抗する為拳を構えた。





アリスは体術も優れており、速く力強い拳が小十郎を襲う。


また受け身を取り、力を逃がすがそれでもアリスの一撃は小十郎を疲労させていった。


「…剣術だけじゃなく体術もお手の物ってか?…」



息切れしながら小十郎が呟く。



『生きる為に身につけただけよ…』


今まで涼しい顔で闘っていたアリスだったが、息が上がり彼女もかなり疲弊しているようだった。

先程の猛攻は自分との戦闘をを直ぐに終わらせる為のものだったと小十郎は察した。
彼女は今朝まで怪我人だった事を思い出した…
本調子で無くともこれだけの力を発揮するアリスには底知れぬ戦闘力があるのだと小十郎は思った。

だが、今の彼女の体力は減少し本領が発揮出来ないのだ。
ならばもっと疲弊させ、弱ったところを狙うしか今の小十郎には出来なさそうであった。



「ならばその生きる為に身につけた武術を俺に見せてみろ」


小十郎が軽く挑発すると彼女は直ぐに乗ってきた。

それが罠とも知らずに…。



再び始まるアリスの猛攻を小十郎は出来るだけ自分の体力を減らさぬように防御した。



だが何時迄も同じ攻撃をしてくる筈も無かった。


アリスは正面から小十郎を攻撃するのをやめ、彼の背後に回り込むと凄まじい勢いで回し蹴りをした。

アリスの脚が小十郎の脇腹に当たり、留まることができなかった力が小十郎を壁へ吹き飛ばす。



白い漆喰でできた壁に小十郎が打ち付けられ、埋め込まれた。




『…ハァ…ハァ……』


アリスが息を切らし壁にめり込んだ小十郎を睨んでいたが、体力の限界が近いのか彼女がが膝をついた。




「hey!アリス!!膝を付くのはまだ早いぜ!」


暫く何処かへ行って政宗が刀を持って帰ってきた。


そして庭に出て政宗は刀をアリスに向けた。



「俺も参加させてもらうぜ You see?」



アリスが再び立ち上がり、最初の構えを取ると何も握られていない手が光始めた。

するとその光が収束すると大剣の形になり、それは立派な大剣になった。


「良いモン持ってんじゃねえか!行くぜ!」



『…本気を出すならやっぱりこっちね…でも…』



アリスは呟くと突いてきた政宗を大剣で薙ぎ払うと大剣とは思えないほどの速さで追撃した。


先程の戦いを見ていた政宗は追撃が来ると身構えていた為アリスの大剣を防ぐ事が出来た。


「HA!!」


アリスの追撃を防いだ政宗が直ぐに反撃をしてきた。

予想外の行動にアリスは何も出来ず政宗の反撃を食らった。



『っ…』

直ぐに後ろへ飛び退いた。


辛うじて腕をを裂かれるだけだったがアリスの腕から鮮血が流れ出だし地面をしとどに濡らした。



退いたアリスは大剣を地面に突き立て杖の様にし、身体を預け腕を庇いながら崩れ落ちた。


「もっと遊びたかったがな…これだけできればperfectだ」



政宗が刀を納めアリスに近づくとアリスがヨロヨロと立ち上がり大剣を離すと大剣は光となって消えた。


「おい、大丈夫か?腕を見せろ」


『…大丈夫よ…傷はもう無い…』


ふらふらと覚束ない足取りでアリスは傍観していた熾羅の所まで歩くと熾羅に倒れこんだ。

「まだ魔力が回復していないと言うのに貴女はまた無茶をして…」

熾羅はアリスを受け止め軽々と抱き上げた。


「Sorry…やっぱり無理させちまったか?」


「いえ…貴方方に認めていただかねばアリス様はここには居られませんから」


そう言って熾羅は縁側に腰掛けアリスの顔に手を這わせた。


「そう言えばアンタは良いのか?」


「はい、私はアリス様さえ良ければそれで良いので」


「アンタを追い出す言ったらどうする?」


謙虚な熾羅を政宗が脅した。


「ふふふ…アリス様がそうはさせないでしょう。それとも私が居て都合が悪い事でも?」


熾羅は穏やかに笑っているが目が笑っていなかった…。


「冗談だ…アンタもFellowとして迎えてやるよ」


「所で彼処で伸びている殿方は宜しいのですか?」


熾羅が壁の前で伸びている小十郎を見つめた。



「オイ!小十郎!いつまで伸びてる!Get up!!」


政宗がハッとして小十郎の方へ駆けた。


「面白くなりそうですね…アリス様…せめて今だけでもゆっくりとお休みください」


熾羅は優しく微笑みアリスの頭を撫でた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ