頂き物部屋

□俺の弟は、
2ページ/2ページ

「え、フラレたって、誰に?」

「クラスの女の子…」


まず、好きな子がいる時点から知らないぞ!?
銀時が好きな子…えぇえ!?


「くすん、普通にフラレたならまだよかったんだ。なのに…」

「なのに?」

「フリ方があまりにも嘘っぽくて…」

フルのに嘘とかあるのか。
初耳だ。


「どんなフリ方されたんだ?」

「…『私、もう結婚してるの』って」


……?

結婚してる?
銀時のクラスメイトってことは中学二年…
え?結婚!?

「早くねぇか結婚って!?」


あ、今俺、久しぶりに叫んだかも。


「だよなぁ!あまりにも嘘っぽいだろ!?酷すぎるだろ!…ぐすっ」

さすがに可哀想だ。
フル理由が結婚だなんて…

「でも、本当に結婚してる可能性もあるんじゃないか?」

「マジかよ…」

「その女、嘘つくような女なのか?」

「……つかない。結野は、すごい清楚で、優しい…」


結野っていうのかそいつ。

「じゃあ、信じてやれよ。別にお前が特別嫌われてなんかいねぇよ」

また泣き出しそうな銀時の頭を撫でる。

あぁ、久しぶりだな。撫でるの。

やっぱり銀時の頭はふわふわしてて気持ちよかった。

「…くすぐってぇ」


へへ、と銀時が微かに笑う。
不意にその顔にドキッとした。

「…俺、頑張る」

「?何を?」

「兄貴のようにかっこよくなる!」

「は?」

「兄貴はなんでも完璧すぎてイラついてたんだ。でも、やっぱり憧れなんだよな」

「え、え?」


急に銀時は動きだし、階段をかけ上る。

「兄貴、…ありがと。」


「っ!?」


銀時は赤くなった頬で笑った。



しばらく、俺はその場に立ち尽くしていた。

…俺の弟は可愛くない。


そう、俺がさっきまで思っていたことだ。


だが…違うみたいだ。


女にフラれて大泣きして、優しい言葉をかけるとふにゃりと笑う。

銀時は俺が嫌いなんじゃなくて、ただ、憧れてたなんて。


やばい、嬉しい。


久しぶりに笑ったその顔はあまりにも、眩しかった。


俺の弟は可愛い。
今、確かにそう思った。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ