捧げ物

□満天宮御伽草子×夢想曲ートロイメライー
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困惑する私をよそに、晋作は少年に突っかかる。

「お前こそ、いきなり現れておいて失礼なことを言うな。しかも、僕に剣で勝負を挑むとは」

既に刀に手をかけている。

「待って晋作!!」

私は慌てて晋作の肩を掴む。

神様に刀を向けるなんて、それこそ何があるか分からない。

「祟られるわよ!?」

「祟られる?」

眉を潜める晋作。

どうやら、気づいていないみたいだ。

私は晋作だけに聞こえる様に小声で話す。

「あの男の子、きっとここの神様よ」

「何じゃと?」

「晋作がお供え物食べようとしたりするから怒ってるのよ。ほら、謝らなくちゃ」

そう言って謝罪を促すけれど、晋作は男の子に向き直って言った。


「お前、本当に神様なのか?」

その言葉に男の子は僅かに口元を弛ませた。

それを肯定と受け取ったのか、晋作はそうか、としきりに頷く。


「本当に神様なら一つ頼みがあるんじゃ。僕の背を高くしてくれ!!」

先程までの態度とは一転、地面に着く勢いで頭を下げた晋作を、私も男の子も無言で見つめる。


冷たい風が私達の間を吹き抜ける。

「……とりあえず、一生そのままでいろ、チビが」

「何じゃと、人に刀を向けたり、お前それでも神様か!?」

「まあまあ、落ち着いて晋作」

再び飛び掛かりそうな晋作をなだめて、私は男の子に向き直る。


「私、和泉夕霧と言います。こっちは晋作。失礼なことをしてごめんなさい」

ぺこり、と頭を下げる私に、男の子は首を振った。

「別にいいさ。俺は大吉だ。お前、さっき何か願っていたな」

「見てたんですか」

「ああ、何を願ってたんだ?」

そう聞かれて、少し照れ臭いけれど私は笑顔で答えた。


「みんなとずっと一緒に笑い合えるように、みんなを守る力をください。ってお願いしてました」

そう言うと、大吉さんは驚いた様に目を丸くした。

「やっぱり、女のくせに変ですかね?」
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