『雨宿り』
「…降ってきちゃった。」
冷たくて小さな雫が私の鼻先をかすめる。
片手を宙にかざせば、ぱらぱらと降る小雨が手の平を湿らせた。
町まで用事があったのだが、すぐ帰れると高を括って傘を置いてきたのがまずかった。
用事を済ませた頃には、最初遠くに見えた入道雲がどんどんと近づいてきて。
これはまずいと帰り道を急いだのだが間に合わず、その内乾ききった地面に点々と雨の雫が描かれ始める。
慌てて近くの木の下に駆け込んだ時には、まさに土砂降り状態。
完全に動けなくなってしまった。
「早く止まないかな……。」
そんな事を呟きながら空を見上げていると、突然激しい音が鳴り響き、辺りが一瞬眩い光に包まれた。
強い雷光に目が眩む。
──雷!?
雷が苦手な私は目を瞑ってその場にしゃがみ込む。
――…早く鳴り止んで!!
まだ空は独特の唸り声を上げている。