flower 〜名探偵コナン 短編集〜
□日常
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「蘭ねーちゃん」
いつからこんなに楽に言えるようになったのだろう。
体が小さくなったばかりの頃は戸惑いながら呼んでいたその名を、いつからか躊躇いもなく言えるようになっていた。
蘭のことがキライになったとか、恋愛対象として見れなくなったとか、そういうことではない。
自分が、蘭をそういう風に呼ぶ日常に慣れてしまった。
ただそれだけのことだ。
「コナンくん」
コナンは偽りの名を呼ぶ方へ振り向いた。
この名ーー江戸川コナンにも随分慣れた。
最初は返事するのも苦労してたのに
「ご飯できたよ」
そこには『蘭ねーちゃん』がいた。
「はーい」
『江戸川コナン』は返事をして、台所へ向かう。
この日常に慣れたからと言って、何時までもこの生活を続けるわけにはいかない。
いつか、いつか何の躊躇いもなく『蘭』と呼べる日を取り戻さなければ。
『新一』と呼ばれる日を取り戻さなければ。
『工藤新一』の日常を。
必ず、この手で。