小説:君想ふ。
□朝日は必ず昇るけれど、 同じ日は二度とこないから。
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私はあいつの幼馴染みだ。
1つ家を挟んだら、泉家の表札のついている家がある。
あいつには、彼女がいる。
7月に部活を引退してすぐ付き合い始めた、かわいい女の子。
引退試合、泉家の母から誘われて行ったとき見に来ていた。
あいつの口からは聞いていないけれど、あいつの友達から聞いた。
悔しいけど、負けたと思った。
でも、陰でなにか言われるのは、どうしてもいい気にはなれなかった。
でも、責めきれない自分がいた。
あの子の気持ちもわかるもの、だけど、こんなのはよくないと、ループするだけだったけれど。
親友は、いつもだまって私の話を聞いてくれた。3年に上がってからはほとんど会えていなかったけれど。
上がってすぐはよく話にいっていた。
でも次第にクラスの皆が親友と仲良くなっていって、話せる時間は電話だけになってしまった。
顔見て話したいのに。
それも、夏休みからは、没収されてしまった。
親友は、無闇なことをいわない。
親友もきっと、あのこの気持ちを察しているにちがいない。
相手の気持ちが分かるからと言って、不満を口に出さないというほど、できた人間ではない私は、親友に話してしまう。
これが普通の子だと、愚痴大会みたいになる。これは女の子特有なものも含まれているから、なんとも言えない。
私って、子どもなんだな、そりゃ中学生はまだ子どもだけれども。
親友は、考えてくれる。
安易な考えで、人の愚痴をいうのではなく、深く考えてくれるのだ。
過去に人を傷つけてしまったことを深く悔やんでいる。普通の人から考えれば、そんなことを未だに悩んでいるのか、というレベル。
人を傷つけてしまったという事実には代わりないが。
ともかく、親友は優しいから、いまでも引きずっているのだ。
私は結局、親友が一番なのだ。
私はあいつが好きだ。
それはねもはもない、ただ漠然とした思いに過ぎない。
最近は本当にあいつが好きなのか?と思い始めた。
ずっと一緒にいたから、取られて意地を張ってるだけじゃないか、と。
あいつにしか話せないことがあって、その時間がなくなっのが嫌だったんじゃないのかって。
私は、本当に恋をしてるのだろうか。
あいつを失うよりも、親友を失う方がこわい。
10月、周りは皆問題集に真剣に取り組むなか、一人もんもんと考えを巡らせていた。
卒業したら、この日常はどうなるのかな。
朝日は必ず昇るけれど、
同じ日は二度とこないから。
今を大事に、なんて言葉の本当の意味なんかこれっぽっちもわかってなかった。