小説:君想ふ。

□朝日は必ず昇るけれど、 同じ日は二度とこないから。
1ページ/1ページ



私はあいつの幼馴染みだ。
1つ家を挟んだら、泉家の表札のついている家がある。

あいつには、彼女がいる。
7月に部活を引退してすぐ付き合い始めた、かわいい女の子。

引退試合、泉家の母から誘われて行ったとき見に来ていた。

あいつの口からは聞いていないけれど、あいつの友達から聞いた。

悔しいけど、負けたと思った。
でも、陰でなにか言われるのは、どうしてもいい気にはなれなかった。
でも、責めきれない自分がいた。
あの子の気持ちもわかるもの、だけど、こんなのはよくないと、ループするだけだったけれど。


親友は、いつもだまって私の話を聞いてくれた。3年に上がってからはほとんど会えていなかったけれど。

上がってすぐはよく話にいっていた。
でも次第にクラスの皆が親友と仲良くなっていって、話せる時間は電話だけになってしまった。
顔見て話したいのに。

それも、夏休みからは、没収されてしまった。

親友は、無闇なことをいわない。
親友もきっと、あのこの気持ちを察しているにちがいない。

相手の気持ちが分かるからと言って、不満を口に出さないというほど、できた人間ではない私は、親友に話してしまう。

これが普通の子だと、愚痴大会みたいになる。これは女の子特有なものも含まれているから、なんとも言えない。

私って、子どもなんだな、そりゃ中学生はまだ子どもだけれども。

親友は、考えてくれる。
安易な考えで、人の愚痴をいうのではなく、深く考えてくれるのだ。
過去に人を傷つけてしまったことを深く悔やんでいる。普通の人から考えれば、そんなことを未だに悩んでいるのか、というレベル。
人を傷つけてしまったという事実には代わりないが。

ともかく、親友は優しいから、いまでも引きずっているのだ。

私は結局、親友が一番なのだ。
私はあいつが好きだ。

それはねもはもない、ただ漠然とした思いに過ぎない。
最近は本当にあいつが好きなのか?と思い始めた。
ずっと一緒にいたから、取られて意地を張ってるだけじゃないか、と。

あいつにしか話せないことがあって、その時間がなくなっのが嫌だったんじゃないのかって。

私は、本当に恋をしてるのだろうか。
あいつを失うよりも、親友を失う方がこわい。

10月、周りは皆問題集に真剣に取り組むなか、一人もんもんと考えを巡らせていた。


卒業したら、この日常はどうなるのかな。


朝日は必ず昇るけれど、
同じ日は二度とこないから。


今を大事に、なんて言葉の本当の意味なんかこれっぽっちもわかってなかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ