短編置き場

□最も忘れたくて、一番忘れたくない記憶
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そんな夢をきっかけにボロボロとよみがえってくる思い出のカケラ。
歯止めが効かなくなったように、夢の中だけではなく日中も思い出すようになった。

『春香、そのいいか?』
『え、えっと、うん』

付き合い始めて2度目の年越しの日だった。

私も悟も、クリスマスなんて興味はなくお互い任務だった。
その代わりと言っては何だけど、年越しだけは一緒にと
大晦日を過ごしていた。寮には私たち以外は任務か帰省しているかで誰も居なかった。

悟の部屋になんて、何度も足を運んでいた。
行くたびにドキドキしていたけれど、悟は一向に私に手を出す気配はなかった。

私に魅力がないことが原因かもしれないと落ち込んだものだ。
ああ、それでもって手を出してもらえるかもなんて考えていた私が恥ずかしい。

身体の相性が悪くて別れることもある。
と聞いたことがある。つい最近雑誌でも見てしまった。
それなら、このままなくってもいっかと油断していた。

年越し番組を見ていると、急に後ろからお腹に手が回って抱き締められる。
熱がこもった声が、耳元で聞こえた。

『い、一応きくけど…初めて、だよな?』
『は、はい』

テレビも電気を消されて、ブラのホックを外される。
緊張のあまり、全身に力が入っているのがわかる。

『力入りすぎ』
『だ、だって』

力の抜き方なんて分からない。

洋服をきれいにはぎとられ、悟も上半身だけを脱いだ状態だ。
肌から伝わる温度が、触れられたとこが熱い。

『春香』
私の名前をよんで、手を取って悟の胸に当てる。

『俺も同じ、めちゃくちゃ緊張してる』
悟の早い鼓動が手を通して伝わってくる。

悟も同じなのか。

『あとここも、やばい』

股間にまで手を持っていかれて、固いそれを布越しにあてつけられる。
せっかくほんの少しだけ緊張が和らいだのに再度固まる姿を見て笑われた。
頭に血が上って何が何だかわからないけど、私で興奮してくれているのが
たまらなくうれしかった。

『春香、ホントにいいのか?』
『うん、早く』
『煽るなよ、今ゴムつけてんだ』
『力抜け』

痛いのと、圧迫感が押し寄せるけど幸福感の方が大きかった。

『これで、ホントに俺のもんだな』

そういって、抱きしめられた。
好きな人とできた幸せをかみしめた。


『身体、大丈夫か』

翌日の朝は世話焼きになった。
少しだけ腰はだるいけど、大丈夫なのに。

『春香、一緒になろうな』

太陽の光がさす部屋で、悟が光っているのように見えた。
一緒になろうって、そういう意味だよね。
私の解釈間違ってないよね、とおもながら頷いた。

家のしがらみ問題は抱えているけど、悟ならきっとどうにかしてしまうだろう。
くしゃっと笑う君との未来を信じて、疑わなかった。


最も忘れたくて、一番忘れたくない記憶

(忘れることもできず、思い出だけで生きていくこともままならない)



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